\[ \def\mcC{\mathcal C} \def\mcF{\mathcal F} \def\bsA{\boldsymbol A} \def\bsC{\boldsymbol C} \def\bsN{\boldsymbol N} \def\bsQ{\boldsymbol Q} \def\bsR{\boldsymbol R} \def\bsS{\boldsymbol S} \def\bsZ{\boldsymbol Z} \]
2020/12/01
2020/12/06 リニューアルとプログラム追加
多項式行列の和や積はまた多項式行列である。任意の $K$ の要素を多項式行列に掛けても多項式行列となる。 $K$ 上の行列も多項式行列である。
$E$ を(適当なサイズの)単位行列とする。
$K$ 上の行列を $M$ とすると $xE-M$ は多項式行列となる。これを $M$ の特性 $x$-行列(あるいは単に特性行列)と言う。
基本変形は可逆な操作である。
基本変形は行列で表現できる。
2つの多項式行列 $A$ と $B$ が基本変形の繰り返しによって互いに移るとき、$A$ と $B$ は対等であると言い $A\sim B$ で表す。
この場合 $B=SAT$ で表現できる。
$S$ は単位行列 $E$ に行基本変形を繰り返して生成される行列である。
$T$ は単位行列 $E$ に列基本変形を繰り返して生成される行列である。
$M$ を正方行列とする。$M$ に対して或る多項式 $f(x)$ が存在して $f(M)=0$ となる。
ただし $f(x)$ の定数項には単位行列 $E$ を添えておく。
$f(x)$ の中で最小次数のものを $M$ の最小多項式と言う。
$\hat M$ を $xE - M$ の単因子標準形とすると $\hat M$ の対角要素のうち、最大次数の多項式は $M$ の最小多項式となっている。
$xE-M$ の行列式 $D(x)$ は $M$ の特性多項式と呼ばれる。最小多項式は特性多項式を割り切る。従って $D(M)=0$ となる。(ケイリー・ハミルトンの定理)
或る行列 $M$ の特性行列の単因子標準形の対角要素は(逆順に書いて)
$$(x-3)^3 (x-2) ,\quad x-2 ,\quad x-2 ,\quad 1 ,\quad 1 ,\quad 1$$
であったとする。その場合、行列 $M$ の Jordan 標準形 $J$ は次のように求まる。
単因子標準形の対角要素に現れる $(x-\alpha)^\nu$ は1つの Jordan 細胞 $J_\nu(\alpha)$ に対応する。
この場合、Jordan 細胞 $J_1(2)=\begin{pmatrix}2\end{pmatrix}$ が $3$ つ、$J_3(3)=\begin{pmatrix}3&1&0\\0&3&1\\0&0&3\end{pmatrix}$ が $1$ つ存在するので
$$J=\begin{pmatrix}2 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 2 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
0 & 0 & 2 & 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 3 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 3 & 1 \\ 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 3 \\ \end{pmatrix}
$$
となる。
Jordan 行列との対応を求める場合、単因子標準形のすべての対角要素は一次式の積に分解されている必要がある。$K$ として複素数体 $\bsC$ が設定されていれば(理論的には)可能であるが、コンピュータにおいては無理数の厳密な扱いは極めて困難である。行列の次元が大きい場合には Jordan 行列は求められないと割り切った方が賢明であろう。
行列多項式の除算:
$P,D$ を各々行列多項式とする。
$D$ が正則な行列多項式であれば、$P$ を $D$ で割った商 $Q$ と剰余 $R$ が定義できる。
$P=QD+R$ となる $Q,R$ を各々右整商、右剰余と言う。
$P=DQ+R$ となる $Q,R$ を各々左整商、左剰余と言う。
$K$ 上の行列 $M_1$ と $M_2$ が相似であるとは、$P^{-1}M_1 P= M_2$ となる $K$ 上の正則行列 $P$ が存在することである。この $P$ の求め方を示す。
行列 $M_1$ と $M_2$ が相似であることの必要十分条件は、それらの特性行列(すなわち $xE-M_1$ と $xE-M_2$)の単因子標準形が一致していることである。これは単因子標準形に関する非常に重要な定理であるが、その証明は難しい。マリツェフ『線型代数学(1)』 p.132 にその証明と $P$ の求め方がある。あるいは斎藤『線形代数入門』 p.181 にもある。
従って $M_1$ と $M_2$ が相似であれば $U(x)M_1 V(x)=S(s)M_2 T(x)$ となる $K[x]$ の可逆行列 $U(x),V(x),S(x),T(x)$ が存在する。そこで $T(x)V(x)^{-1}$ を $xE-M_1$ で割った右剰余を $R$ とする。$R$ には $x$ は含まれていない。 そして$R^{-1}M_2 R = M_1$ の関係が成立している。すなわち、この $R$ が変換行列 $P$ である。
従って $xE-M$ の単因子標準形の対角要素が $x$ の一次式の積にまで分解されていれば、$M$ の Jordan 標準形 $J$ が判り、$P^{-1}MP=J$ となる $P$ を得る。
有理数体を $\bsQ$ で表す。
ここでは $\bsQ[x]$ 上の行列の単因子標準形を求める Maxima のプログラムを紹介する。
整数行列の単因子標準形を求めるプログラムは http://ar.nyx.link/lde/
で既に公開済みである。多項式行列の場合は基本的な考え方は共通しているもののコーディングは遥かに難しい。
Maxima には膨大な関数が準備されており、その中には数値行列 $M$ の Jordan 標準形 $J$ を求める関数も含まれている。従って特殊な多項式行列である、行列 $M$ の特性行列 $xE - M$ ($E$ は単位行列) の単因子標準形は Jordan 標準形が得られれば直ちに得られるが、一般的な多項式行列の単因子標準形を求める関数は準備されていないようである。ここではそれを求めるプログラムを公開する。
ダウンロード http:elmdiv.mac
$M$ を $x$ の多項式行列、$\hat M$ をその単因子標準形とすると、
\[ SMT=\hat M \]
となる可逆な多項式行列 $S,T$ が存在する。このプログラム elmdiv.mac
では $\hat M$ と共に $S,T$ をも求めている。なお $S,T$ は一意には定まらないことに注意しておく。
$\hat M,S,T$ を求めるアルゴリズムの基本的な考え方は整数行列の単因子標準形を求める場合と何ら変わらない。従ってここでは改めて解説しない。整数行列の場合には http://ar.nyx.link/lde/
で解説されている。
directory("");
batchload("elmdiv.mac");
(%i2) M:matrix([1-x,x^2,x],[x,x,-x],[1+x^2,x^2,-x^2]); (%o2) matrix([1-x,x^2,x],[x,x,-x],[x^2+1,x^2,-x^2]) (%i3) elmdiv(M); step0 0 [matrix([1,0,0],[0,1,0],[0,0,1]), matrix([1-x,x^2,x],[x,x,-x],[x^2+1,x^2,-x^2]), matrix([1,0,0],[0,1,0],[0,0,1])] step1 1 [matrix([-1,0,0],[0,1,0],[0,0,1]), matrix([x-1,-x^2,-x],[x,x,-x],[x^2+1,x^2,-x^2]), matrix([1,0,0],[0,1,0],[0,0,1])] step2 1 [matrix([-1,0,0],[1,1,0],[x+1,0,1]), matrix([x-1,-x^2,-x],[1,x^2+x,0],[2,x^3+2*x^2,x]), matrix([1,0,0],[0,1,0],[0,0,1])] 中略 step1 2 [matrix([1,1,0],[x,x-1,0],[-1,(-x)-1,1]), matrix([1,0,0],[0,x,0],[0,0,(-x^2)-x]), matrix([1,0,(-x^2)-x],[0,0,1],[0,1,(-x^2)-x+1])] step1 3 [matrix([1,1,0],[x,x-1,0],[1,x+1,-1]), matrix([1,0,0],[0,x,0],[0,0,x^2+x]), matrix([1,0,(-x^2)-x],[0,0,1],[0,1,(-x^2)-x+1])] (%o3) [matrix([1,1,0],[x,x-1,0],[1,x+1,-1]), matrix([1,0,0],[0,x,0],[0,0,x*(x+1)]), matrix([1,0,-x*(x+1)],[0,0,1],[0,1,-(x^2+x-1)])] (%i4)となる。計算の途中結果も出力されている。
elmdiv(M):=block([B,n,k,x,r], n:min(length(M),length(M[1])), B:tab_gen(M), dprint("step0",0,B), /* don't use 'for' loop */ k:1, /* don't replace B[2] with A, which behaves differently! */ while k <= n and chk_zero(B[2],k)=false do block(/* it seems the 'block' is required. why? */ X:step1(B,k), if X=false then (k:n+1, return(false)), B:X, dprint("step1",k,B), loop, /* we should avoid go(loop) if possible. this is merely an example for go(loop) */ /* don't replace B[2] with A, which behaves differently! */ unless chk_col(B[2],k) do ( B:step2(B,k), dprint("step2",k,B), B:step1(B,k), dprint("step1",k,B) ), unless chk_row(B[2],k) do ( B:step3(B,k), dprint("step3",k,B), B:step1(B,k), dprint("step1",k,B) ), if chk_col(B[2],k)=false then go(loop), /* we may assume here both chk_col(B[2],k) and chk_row(B[2],k) are true */ B:tab_fix(B,k), if chk_mod(B[2],k) then k:k+1 else ( X:step4(B,k), if X = false then k:n+1 else ( B:X, dprint("step4",k,B) ) ) ), r:chk_final(B,M), if r # 0 then print("# ERROR: bug!",r,B,M), return(factor(B)) );この部分は
lde.mac
の中の elmdiv(M)
と殆ど違わない。基本的なアルゴリズムは同じだからである。
elmdiv.mac
には、これを取り出す関数 minpoly(M)
が付属している。M:matrix([2,3],[5,7]); minpoly(M);この出力は
x^2-9*x-1
M^^2 - 9*M - 1*ident(2)
matrix([0,0],[0,0])
load("diag"); M:matrix([2,3],[5,7]); minimalPoly(jordan(M));
(x+(sqrt(85)-9)/2)*(x-(sqrt(85)+9)/2)
expand((x+(sqrt(85)-9)/2)*(x-(sqrt(85)+9)/2));
M
からmp_gen(M);
M
の行列多項式が得られる。M:matrix([x^2-2*x-1,2*x+3],[x+2,2*x^2-3*x]); mp_gen(M);で、出力
[matrix([1,0],[0,2]),matrix([-2,2],[1,-3]),matrix([-1,3],[2,0])]
逆に $x$ の係数のリスト Mp
から多項式行列を求めるには
mp_matrix(Mp);
P
を行列多項式 D
で右から割った商と剰余を求めるにはL:mp_rdivmod(P,D) L[1]; /* 右整商 */ L[2]; /* 右剰余 */
L:mp_ldivmod(P,D) L[1]; /* 左整商 */ L[2]; /* 左剰余 */
例:
\[
P=\begin{pmatrix}2 & 3 \\ -1 & 2 \\ \end{pmatrix} x^4 +
\begin{pmatrix}3 & 1 \\ 4 & 5 \\ \end{pmatrix} x^3 +
\begin{pmatrix}5 & 2 \\ 1 & 3 \\ \end{pmatrix} x^2 +
\begin{pmatrix}2 & 1 \\ 1 & 7 \\ \end{pmatrix} x +
\begin{pmatrix}5 & 1 \\ 2 & 3 \\ \end{pmatrix}\\
D=\begin{pmatrix}2 & 5 \\ 1 & 3 \\ \end{pmatrix} x^2 +
\begin{pmatrix}7 & 2 \\ 3 & 5 \\ \end{pmatrix} x +
\begin{pmatrix}-2 & 1 \\ 3 & 2 \\ \end{pmatrix}
\]
の下で、$ P=QD+R$ となる $Q,R$ を求めるには
P:[matrix([2,3],[-1,2]),matrix([3,1],[4,5]),matrix([5,2],[1,3]),matrix([2,1],[1,7]),matrix([5,1],[2,3])]; D:[matrix([2,5],[1,3]),matrix([7,2],[3,5]),matrix([-2,1],[3,2])]; L:mp_rdivmod(P,D);を実行すればよい。結果は
(%i112) Q:L[1]; (%o112) [matrix([3,-4],[-5,9]),matrix([-33,60],[66,-120]), matrix([449,-824],[-872,1606])] (%i113) R:L[2]; (%o113) [matrix([-915,3136],[1779,-6105]),matrix([3375,1200],[-6560,-2337])]となり、
mat_trans(M1,M2)
が elmdiv.mac
に含まれている。M1:matrix([0,-1,-1,0],[-1,1,0,1],[2,1,2,-1],[-1,-1,-1,1]); M2:matrix([1,1,0,0],[0,1,0,0],[0,0,1,1],[0,0,0,1]); mat_trans(M1,M2);より
matrix([1,0,0,0],[-1,-1,-1,0],[0,0,1,0],[1,-1,0,-1])
mat_trans(M1,M2)
は false
を返す。
lde.mac
と elmdiv.mac
は同名の関数を共有している。従ってロードする Maxima を分けざるを得ない。これをやりやすくするために筆者は maxima
コマンドを準備している。
Maxima のプログラムが特定の集団だけから配布され、利用者はそれを利用するだけであれば、それでも良いのであるが、利用者がプログラム作成に参加するのであれば、現在の仕様は破綻するであろう。
matrix([2]).matrix([3]);
6
が表示される。matrix([6])
ではない。
もっと酷いのは
matrix([1,2]).matrix([3,4]);
11
elmdiv.mac
には
display2d:false; ap:apropos; /* alias for apropos */ ld():=batchload("elmdiv.mac");
#!/bin/sh exec rlwrap /Applications/Maxima.app/Contents/Resources/maxima.sh "$1" "$2" "$3" "$3" "$4" "$5" "$6" "$7" "$8" "$9"
実行ファイル maxima
rlwrap をインストールしておくと良い。入力行の編集ができる。
有理数体を $\bsQ$ で表す。
ここでは $\bsQ[x]$ 上の行列の単因子標準形を求める SymPy のプログラムを紹介する。
整数行列の単因子標準形を求めるプログラムは http://ar.nyx.link/lde/
で既に公開済みである。多項式行列の場合は基本的な考え方は共通しているもののコーディングは遥かに難しい。
SymPy には膨大な関数が準備されており、その中には数値行列 $M$ の Jordan 標準形 $J$ を求める関数も含まれている。従って特殊な多項式行列である、行列 $M$ の特性行列 $xE - M$ ($E$ は単位行列) の単因子標準形は Jordan 標準形から直ちに得られるが、一般的な多項式行列の単因子標準形を求める関数は準備されていないようである。ここではそれを求めるプログラムを公開する。
ダウンロード http:melmdiv.py
$M$ を $x$ の多項式行列、$\hat M$ をその単因子標準形とすると、
\[ SMT=\hat M \]
となる可逆な多項式行列 $S,T$ が存在する。このプログラム melmdiv.py
では $\hat M$ と共に $S,T$ をも求めている。なお $S,T$ は一意には定まらないことに注意しておく。
$\hat M,S,T$ を求めるアルゴリズムの基本的な考え方は整数行列の単因子標準形を求める場合と何ら変わらない。従ってここでは改めて解説しない。整数行列の場合には http://ar.nyx.link/lde/
で解説されている。
import os os.getcwd()
import melmdiv from melmdiv import *
>>> M=Mat([1-x,x**2,x],[x,x,-x],[1+x**2,x*2,-x**2]) >>> elmdiv(M) step0 0 [Matrix([ [1, 0, 0], [0, 1, 0], [0, 0, 1]]), Matrix([ [ 1 - x, x**2, x], [ x, x, -x], [x**2 + 1, 2*x, -x**2]]), Matrix([ [1, 0, 0], [0, 1, 0], [0, 0, 1]])] step1 1 [Matrix([ [-1, 0, 0], [ 0, 1, 0], [ 0, 0, 1]]), Matrix([ [ x - 1, -x**2, -x], [ x, x, -x], [x**2 + 1, 2*x, -x**2]]), Matrix([ [1, 0, 0], [0, 1, 0], [0, 0, 1]])] 中略 step1 3 [Matrix([ [ 1, 1, 0], [ x, x - 1, 0], [1/2, x/2 + 1/2, -1/2]]), Matrix([ [1, 0, 0], [0, x, 0], [0, 0, x**2 - x/2]]), Matrix([ [1, 0, -x**2 - x], [0, 0, 1], [0, 1, -x**2 - x + 1]])] [Matrix([ [ 1, 1, 0], [ x, x - 1, 0], [1/2, (x + 1)/2, -1/2]]), Matrix([ [1, 0, 0], [0, x, 0], [0, 0, x*(2*x - 1)/2]]), Matrix([ [1, 0, -x*(x + 1)], [0, 0, 1], [0, 1, -x**2 - x + 1]])] >>>となる。計算の途中結果も出力されている。
def elmdiv(M): n = min(M.shape) B = tab_gen(M) dprint("step0",-1,B) k = 0 # don't replace B[1] with A, which behaves differently! while k < n and chk_zero(B[1],k)==False: X = step1(B,k) if X == False: break B = X dprint("step1",k,B) while True: while chk_col(B[1],k) == False: B = step2(B,k) dprint("step2",k,B) B = step1(B,k) dprint("step1",k,B) while chk_row(B[1],k) == False: B = step3(B,k) dprint("step3",k,B) B = step1(B,k) dprint("step1",k,B) if chk_col(B[1],k) == True: break # we may assume here both chk_col(B[1],k) and chk_row(B[1],k) are true if chk_mod(B[1],k): k += 1 else: # BUG! ned this one. you must also fix mlde.py. examine also lde.mac! X = step4(B,k) if X==False: break B = X dprint("step4",k,B) r = chk_final(B,M) if r != 0 : error("# ERROR: bug!",r) return mat_factor(B)
この部分は mlde.py
の中の elmdiv(M)
と殆ど違わない。基本的なアルゴリズムは同じだからである。
melmdiv.py
には、これを取り出す関数 minpoly(M)
が付属している。M=Mat([2,3],[5,7]) minpoly(M)この出力は
x**2-9*x-1
M**2 - 9*M - 1*eye(2)
Matrix([ [0, 0], [0, 0]])
M
からmp_gen(M)
M
の行列多項式が得られる。M=Mat([x**2-2*x-1,2*x+3],[x+2,2*x**2-3*x]) mp_gen(M)で、出力
[Matrix([ [1, 0], [0, 2]]), Matrix([ [-2, 2], [ 1, -3]]), Matrix([ [-1, 3], [ 2, 0]])]
逆に $x$ の係数のリスト Mp
から多項式行列を求めるには
mp_matrix(Mp)
P
を行列多項式 D
で右から割った商と剰余を求めるにはL=mp_rdivmod(P,D) L[0] # 右整商 L[1] # 右剰余
L=mp_ldivmod(P,D) L[0] # 左整商 L[1] # 左剰余
例:
\[
P=\begin{pmatrix}2 & 3 \\ -1 & 2 \\ \end{pmatrix} x^4 +
\begin{pmatrix}3 & 1 \\ 4 & 5 \\ \end{pmatrix} x^3 +
\begin{pmatrix}5 & 2 \\ 1 & 3 \\ \end{pmatrix} x^2 +
\begin{pmatrix}2 & 1 \\ 1 & 7 \\ \end{pmatrix} x +
\begin{pmatrix}5 & 1 \\ 2 & 3 \\ \end{pmatrix}\\
D=\begin{pmatrix}2 & 5 \\ 1 & 3 \\ \end{pmatrix} x^2 +
\begin{pmatrix}7 & 2 \\ 3 & 5 \\ \end{pmatrix} x +
\begin{pmatrix}-2 & 1 \\ 3 & 2 \\ \end{pmatrix}
\]
の下で、$ P=QD+R$ となる $Q,R$ を求めるには
P=[Mat([2,3],[-1,2]),Mat([3,1],[4,5]),Mat([5,2],[1,3]),Mat([2,1],[1,7]),Mat([5,1],[2,3])] D=[Mat([2,5],[1,3]),Mat([7,2],[3,5]),Mat([-2,1],[3,2])] L=mp_rdivmod(P,D)を実行すればよい。結果は
>>> L ([Matrix([ [ 3, -4], [-5, 9]]), Matrix([ [-33, 60], [ 66, -120]]), Matrix([ [ 449, -824], [-872, 1606]])], [Matrix([ [-915, 3136], [1779, -6105]]), Matrix([ [ 3375, 1200], [-6560, -2337]])])となり、
mat_trans(M1,M2)
が melmdiv.py
に含まれている。M1=Mat([0,-1,-1,0],[-1,1,0,1],[2,1,2,-1],[-1,-1,-1,1]) M2=Mat([1,1,0,0],[0,1,0,0],[0,0,1,1],[0,0,0,1]) mat_trans(M1,M2)より
Matrix([ [ 1, 0, 0, 0], [-1, -1, -1, 0], [ 0, 0, 1, 0], [ 1, -1, 0, -1]])
mat_trans(M1,M2)
は False
を返す。
根本的に違う世界の言語である。細かなことは違いが多すぎて表にはできない。基本的なことだけを取り上げる。
,
" であるように見せているが、命令のように見えても関数引数に値を与えているのである。そのために関数引数の区切り記号 ",
" が使われている。block
はブロック関数とでも言うべきもので、lambda
と同様に特殊な無名関数なのである。return(...)
は常にブロック関数からの戻りを意味する。
Maxima では繰り返しを表現するときには、本質的には関数であることを頭に入れておかないと訳のわからない動作に悩まされる。
Python のモジュールに相当するものは無いようである。これはとても困る。
*
" ではなく ".
"なのはオブシェクト化ができない代償である。
他方 SymPy は汎用言語の Python のモジュールの一つに過ぎない。従って言語仕様は Python そのものである。Python に慣れている者にとっては親和性が高い。最初の版は2007年であるから[2]、まだ使えるようになってからの歴史はまた浅く、発展途上にあると考えた方が良い。将来性は SymPy に軍配が上がるのではないかと思える。