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iPod

目次

2006/03/14 改訂

iPod が数年前から話題を呼んでいる。読者は iPod に関してはよくご存知であろうから説明に関しては省略する。詳しいことを知りたければ Wikipedia( http://ja.wikipedia.org/wiki/IPod ) を見てもらいたい。ここでは iPod に関係することについて書いていきたいと思う。内容はどちらかといえば論評である。整理できている段階ではないので、当面はまとまりのない記事になる。論評の根拠について誤りがあれば筆者にメールを送っていただきたい。フェアーな処理をするつもりである。

iPod に関係する話題として筆者が取り上げたいと思っているのは、音楽を聴くライフスタイルの変化、音楽配信の問題、音楽著作権の問題、Winny の問題、著作権ビジネスの問題、ネットビジネスの問題などである。

なおこの記事は筆者が1時間の講義のために集めた素材である。従って良く知られた内容が多い。実際の講義は、ここからビックアッブした素材が使われる。たった1時間の講義のためにどれほど多くの時間をかけることやら・・・

ネット時代と CD の売り上げ

Winny 問題

2006/03/05

Winny に関しては筆者は本当のところ論評する資格があるのかどうかも分からない。論評を加えるためには Winny を使ってみる必要があるのだが、使って見たいという気持ちは全くないのである。そもそも筆者は Windows を常用しないのである。嫌々 Windows を使っているのである。仕事がら...

何年か前、Winny の開発者が逮捕された年(2004年)かも知れないし、もっとその前かも知れない、筆者は講義の中で学生に警告した。ウィルスの危険性について話した後に「Winny はウィルスの絶好のターゲットになる。利用者の意識しないところでファイルの交換がされるのは非常に危険なことだ。ウィルスにやられたくなければ Winny を使うな」と。実際にこの予感は的中し、警察、刑務所、裁判所、自衛隊などから高度な秘匿性が要求される情報の流出事件の報道が近頃後を絶たない。

最近の新聞報道に現れる Winny ウィルスによる個人情報ファイルや機密ファイルのまき散らし事件の多いさから判断すると、もはや統制が取れないくらいに Winny が深くインターネット利用者の間に浸透しているのではないかと推定される。そして事件の性格をみるに Winny 問題はもはや単に著作権問題ではなくなっているのである。

Winny に関しては著作権侵害のことばかりが問題になってきたが、著作権法は著作物文化を社会がどのように育てるかの視点には立っておらず、著作ビジネスの側からの一方的な主張になっている。このことが法律自体に対する反発を生んでおり、著作権だけを強調しても問題の解決に繋がっていかないのである。それどころかアンダーグランドの社会を育て、問題をますます深刻化させることになる。その結果が最近の深刻な情報流出事件である。

Winny の作者と言われる 47氏(ペンネーム) は「著作権システムに穴を開けようとした」ということらしいが[3]、このようなことを行っても著作権法はますます著作物の利用者に厳しくなっていくだけである。違法行為とプロテクトのイタチごっこで、著作物はますます利用しずらくなっていく。音楽著作権協会は金を搾り取ることしか考えていないようにすら見える。バソコンの発展の中で音楽を聴くライフスタイルが大きく変化しつつあるにもかかわらず音楽をパソコンで聴かせることに抵抗している。音楽を楽しむ側からの視点がどこにもないのである。変革を求められるのはこのような状況なのである[4]。

参考 URL

  1. http://ja.wikipedia.org/wiki/Winny # Wikipedia Winny
  2. http://winny.cool.ne.jp/ # Winny の普及サイト
  3. http://internet.watch.impress.co.jp/static/column/jiken/2004/09/10/ # Impress の記事
  4. http://www.archi-music.com/tamaki/copyright.html # JASRACの評議員の玉木氏の奮戦記

CD 売り上げの低迷の原因はどこにあるか?

2006/03/06

CD は売り上げが低迷しているという。実際、日本レコード協会の資料[1]によると次の図のように CD 売り上げが 1998 年以来低下し続けているのだ。

cd_all_m_graph01

出典: http://www.riaj.or.jp/data/cd_all/cd_all_m.html

これは日本の統計であるか、欧米の主要諸国でもイギリスを除けば良く似た傾向を示している[2]。

CD 売り上げが減少すれば当然のことながらこの売り上げによって生活している人々、特に問題なのは音楽演奏家などの活動に影響を及ぼす。日本レコード協会もこの原因について考えてほしいものである。

ところで日本レコード協会は CD 売り上げの減少傾向を示すデータと共にCDの不法コピー問題を取り上げている。このように対にして議論されると日本レコード協会はCD売り上げの減少の原因を不法コピーに求めているのだと誰でも考えるであろう。しかし注意深く協会の文書を読んでみると明示的にその原因を語っていない*。

注*: ただしこの件に関しては私の読み方が足らないだけかもしれない。ここに書いてあるという情報があれば知らせてほしい。

ネットを調べると正面からこの原因を論じた文書が存在する[3]。「CD 売り上げ低下の要因は何か」と題する文書で、著者は慶応大学文学部の学生たちである。学生の作品にしては大変質の高い文書である。(さすが慶応大学である。我が愛知大学の学生にはまねができない。) 彼らは次のように結んでいる。

『レコード業界は CD-R/RW メディアへのコピーが原因だとしているが、それ意外に無料の音楽ファイル交換サービス、レンタル CD や中古 CD の利用、携帯電話の支出、音楽の鑑賞時間の減少、魅力的なアーティストや楽曲の減少などの要因が深く関与している可能性が高いのである。』

Winny などのファイル交換ソフトは原因の一つとして挙げられるのであろうか? この問題に関して慶応大学の田中辰雄氏は、Winny によるダウンロード数とCDの売上高の相関を調べた上で次のような結論を出している[4]。

『通説は音楽CDの売上低迷の一因はWinnyなどのファイル交換ソフトの普及にあるとしている。しかし、ここで行った推定では、そのような効果は検出されない。』

この主張を裏付ける他の傍証が存在する。日本レコード協会はファイル交換ソフトの利用実態を 2002 年度以来毎年公表している。「2005 年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要」[5]によると 2005 年度に関してはサンプル数は 26133 人である。このデータは web 上のアンケートであり、データの偏りは覚悟しなくてはならないであろう。さてこの調査によるとファイル交換ソフトを「現在利用」していると答えたインターネットユーザは 2002 年度から 2005 年度の各調査で 3% 前後を推移している。利用ソフトは WinMX と Winny が半々だと考えてよい。ファイル交換ソフトの利用者はCD売り上げの減少傾向を説明できるような増加はしていないのである。

参考 URL

  1. 日本レコード協会「調査・レポート」(http://www.riaj.or.jp/report/)
  2. 日本レコード協会「各国のレコード出荷売り上げ状況」(http://www.riaj.or.jp/data/others/country_shipment.html 2003年)
  3. 澤田真由子、馬飼野友梨、山田亜希子「CD 売り上げ低下の要因は何か?」(http://www.slis.keio.ac.jp/~ueda/semi/2002musiccd.pdf, 2003年)
  4. 田中辰雄「中間報告: 著作権の最適保護水準を求めて」(http://www.moba-ken.jp/core/core01_2.html 2004)
  5. 日本レコード協会「2005 年ファイル交換ソフト利用実態調査結果の概要」
    (http://www.riaj.or.jp/report/file_exc/pdf/file_exc2005.pdf 2005)

DVD ソフトの販売は伸びている

2006/03/06

日本映像ソフト協会が把握している映像ソフトの販売数の統計によれば1、DVD ソフトの売上数はDVDの販売が開始された 1996 年2以来急速に伸びており、映像ソフト全体の伸びを支えている。

売上金額の推移

DVDビデオ 映像ソフト全体
1996 348 257,023
1997 2,897 246,483
1998 7,997 277,154
1999 30,242 247,557
2000 104,713 274,421
2001 151,887 294,001
2002 197,288 324,835
2003 257,787 350,633
2004 319,762 375,393

金額単位:百万円

注: この表の「映像ソフト全体」とはビデオカセット、レーザーディスク、CD関連、DVDビデオ、DVD-ROMの計である。このうち DVD-ROM は微々たる金額で無視してもよいであろう。

この統計を見ると、既存の映像メディアはDVDの登場とともにDVDビデオに置き換わって行った事が分かる。

「映像ソフト全体」の金額をCDの販売金額に加えてみるとCDと映像ソフトの合計売り上げは 1998 年以降もほぼ横ばいである。この事実から我々は 1998 年以来 CD の売り上げが減少しつづけたのは、CD が DVD に食われて行ったからではないかと考えざるをえない。さらに我々は携帯電話市場の急速な伸びを考慮しなくてはならないであろう。携帯電話に払う金が増えればCDやDVDに払う金は減少するのだから。

参考URL:

  1. 日本映像ソフト協会「統計調査(1978年から2004年)の売上数量の推移」(http://www.jva-net.or.jp/jva/data/toukei.pdf 2005)
  2. Wikipedia「DVD」(http://ja.wikipedia.org/wiki/DVD 2006)

著作者への分配金は減っていない

2006/03/14

ところで CD の売り上げの年次推移のグラフはレコード出版社協会も取り上げている。レコード出版社協会はこれをJASRACからの著作権分配金の推移と比較している。(但しこのデータは「レコード売り上げ」ではなく「レコード生産額」であり、グラフの縦軸が 0 から始まっていない事に注意)

item01

 出典: 音楽出版社: http://www.mpaj.or.jp/whats/future/index.html

そして次のように解説している。

「使用料のうち最大のシェアを占めているレコードの生産額は、ここ数年大幅な減少を記録していますが、分配額は1,000億円を超え続けています。それは音楽出版社によって、音楽の新しい利用方法やメディアが開発され、新しい音楽が生み出されるとともに、かつてのヒット曲にも改めて注目が集まっているからです。」( http://www.mpaj.or.jp/whats/future/item01_02.html )

この解説文は多少曖昧である。CDの売り上げの減少傾向の原因を「音楽の新しい利用方法やメディア」にあるとしているようにも見えるが、何も語られていないという解釈も可能である。いずれにせよ、時代の流れとして割り切っているように聞こえる点で健全である。もっとも「音楽の新しい利用方法やメディア」を音楽出版社が開発したとの言い方に関しては異論もあると思う。

CD とコピープロテクト

パソコンが CD 再生の中心機器となるのは時代の流れである。筆者にとっては CD は単なる流通メディア(それはかってのフロッピーディスクがそうであったように)であり、買った CD は直ちに iTunes によってノートパソコンにコピーされる。CD に触れるのは最初の1回だけであり、実際に聴くのはパソコンに接続されたスピーカーあるいはヘッドフォンであった。過去形で書いたのは、現在ではさらに iPod にコピーされて iPod に接続されたヘットフォンで聴くからである。

iPod を買ってからは音楽を聴く場所と時間が飛躍的に増えて、それに伴い多数の CD を新たに購入することになった。

一線を越えたプロテクト技術

2006/03/16

ソニー・ミュージックのホームページ( http://www.sonymusic.co.jp/xcp/index.html )に次の告知が載っている。

米国SONY BMG発売 XCP収録CD(輸入盤)商品交換のお知らせ


2006年2月20日


株式会社ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル


 このたび、米国SONY BMGが発売しているXCPコンテンツ保護ソフトウェアを収録するCDにつき、米国SONY BMGにおける発表を受け、当社が輸入販売しております商品につきまして、国内で商品のご交換をご希望されるお客様は下記のご対応とさせていただきます。

[中略]

<交換期間>

  2006年3月末日までに、上記宛先までお送りくださいますようお願い申し上げます。


XCP(Extended Copy Protection)とはCDのコピープロテクト技術の一種である。XCP技術によって保護されたCDをバソコンに挿入するとrootkitと呼ばれるプログラムがこっそりとバソコンにインストールされる。rootkit はウィルスと言われても仕方のないプログラムであり、ウィルス駆除会社ばかりかマイクロソフトまでもが駆除すべき有害プログラムと断定した。そうした非難を受けてソニーもついに商品のリコールの実施に踏み切ったのである。

そこに至る経緯に関してはネット上に多くの記事が存在するので、関心のある読者は以下のURLを参照してもらいたい。

不法行為を好む者が存在する事も事実ではあるが、かといって対策のために全ての者を犯罪者と同一視し、もっと重大な不法行為を行う感覚は理解できない。最近のソニーは市民的な感覚を失っているように思う。

CCCD

2006/03/18

CCCD(Copy Control CD) とは著作権保護を目的に CD(Compact Disc) に代わって登場した音楽メディアである。日本では 2002 年 AVEX によって最初に導入されて以来、大手のいくつかのレコード会社が続いた1

CD には明瞭な規格が存在するが CCCD には業界の統一規格は存在しない。CCCD で採用されている著作権保護の仕組みは各社各様である。規格の存在は消費者が安心して商品を購入する上で不可欠であるにも関わらす、CCCD には規格が存在しないために、CCCDを買っても音楽がちゃんと再生される保証は存在しない。

CCCD の技術的な目標は

  1. オーディオ用の CD プレィヤーでは音楽を再生できる
  2. バソコンでも再生はできるが CD の音楽データは正しくパソコンにコピーできない

にあると思われるが、この目標が実現できたわけではない。実際には

  1. オーディオ用の CD プレィヤーで聴いた場合に音質が劣化する
  2. パソコンでの再生は保証できないばかりかトラブルの原因になる

と言われている2

CCCD は消費者からの激しい反発を買ったばかりか、音質を落とすことに対してアーチスト側からも反対が続出したようである。2004年9月には AVEX は CCCD を弾力的に運営することを決め3、 Sony Music も CCCD からの撤退を表明した*。結局 CCCD は売り上げ向上には繋がらなかったと推測される。

注 *: Sony Music が採用してきた方式はネットワーク認証型 (いわゆるレーベルゲート CD)であり、これから撤退すると言っただけであり、CCCD そのものから撤退するとは言っていない4。なお XCP 技術による CCCD は米国法人である Sony BMG が採用した方式である。

レーベル各社が CCCD を見限らなくてはならない他の理由がある。今や iPod を代表とする携帯型音楽プレィヤーに音楽を落とせない CD は消費者から見放されるのは必至の状況なのである。

AVEX は中間事業報告書(2005年9月)で次のように述べている。

音楽業界におきましても、平成17年4月から9月の CD 生産金額が、前年同期比5.5%増(社団法人日本レコード協会調べ)となり、平成12年3月期以来減少し続けてきた市場規模が、ここに来て前年同期を上回りました。
[中略]
さらに、アップル社の「i Tunes Music Store」は、本年8月4日に日本でもオンラインストアをオープンし、従来伸び悩んでいたPC音楽配信市場も拡大しつつあります。

出典: http://www.avex.co.jp/j_site/stock/pdf/report_ch18.pdf

CD 生産金額が増えた原因を是非とも分析して欲しいものである。消費者を混乱させる不毛なプロテクトに終止符を打つためにも。

参考URL:

  1. http://ja.wikipedia.org/wiki/CCCD
  2. http://www.muplus.net/cccd/faq.html
  3. http://www.avex.co.jp/j_site/press/2005/press040917.html
  4. http://www.sme.co.jp/sme/pressrelease/20040930.html

デジタル著作物のネット配信

MPEG-4 の威力

2006/03/23

アップルのホームページ ( http://www.apple.com/jp/quicktime/hdgallery/ )を訪問すると最先端の H.264 コーデック映像を見ることができる。思わず、凄いと唸ってしまった。
なにしろ 8Mbps 回線契約の筆者の環境で DVD 品質の映像(480x720)が楽々見られるのである。(下図の 480p では再生速度の 2 倍以上の速度でダウンロードが行われ、映像が途切れない! さすがに 720p は無理である。)

hd-demo

H.264 とは MPEG-4 の標準映像コーデックであり、AVC(Advance Video Codec) とも呼ばれる*。 MPEG-4 とは Moving Picture Experts Group が行っている規格化であり、ここには多数の企業が参加しており(が Sony と Microsoft は参加していない)2、その成果は ISO に採用されている。 コーデックとはデータ圧縮技術である**。H.264 コーデックは MPEG-2 で採用されているコーデックに比べて 2 倍の圧縮能力を持つと言われている3。H.264 コーデックは映像配信の本命になりつつある。

* Wikipedia には Advanced Video Coding と説明されているが何かの間違いであろう。MPEG-4 の公文書3には "MPEG-4's latest video codec is AVC, the Advanced Video Codec." と説明されている。
** 本来は符合化技術であるが最近はデータ圧縮技術の意味で使われる事が多い。

なお MP4 は MPEG-4 で定められたファイル形式であり、コンテンツの入れ物の規格を定めているにすぎない。MP4 は様々なコーデックを扱えるようになっている。MP4 のファイル拡張子は、音声ファイル m4a、映像ファイルは m4v、プロテクトされたファイルは m4p となっている。

MPEG-4 の活動内容に関しては公式ホームページ1に詳しく解説されているが Apple のホームページ5,6にも日本語で分かりやすく解説されている。また竹松昇氏による技術的な解説7,8も素晴らしい。

参考 URL

  1. http://www.m4if.org/m4if/
  2. http://www.m4if.org/membercompanies.php
  3. http://www.m4if.org/public/documents/vault/MPEG4WhitePaperV2a.zip
  4. http://www.m4if.org/resources/mpeg4userfaq.php
  5. http://www.apple.com/jp/mpeg4/
  6. http://www.apple.com/quicktime/technologies/h264/
  7. 竹松昇: 第20回 DVD並みの映像をネットで送る MPEG-4の新方式「AVC(H.264)」とは? (http://www.mpeg.co.jp/libraries/mpeg_labo/winPC_20.html)
  8. 竹松昇: 第21回 次世代動画フォーマットの大本命「H.264/AVC」の仕組みと使い方 (http://www.mpeg.co.jp/libraries/mpeg_labo/winPC_21.html)

DRM を巡る戦い

2006/03/26 図1と説明を追加
2006/03/22

今 DRM が注目を浴びている。今日(2006/03/22)の ITmedia News は次の記事を報じている1

iTunes Music Storeの開放につながる法案が仏下院で可決された。Appleは自社のDRMを守るため、フランスのiTMSを閉鎖するかもしれないとの観測も。

DRM とは Digital Right Management 意味し、日本では「デジタル著作権管理」と訳されている。

著作物の配布権者は配布にあたって条件を消費者に提示する。例えば Apple の iTunes Music Store では次のような条件を提示している/2

お客様には、個人的、非商用目的に限って本商品を利用される権限が与えられるものとします。

お客様には、アイチューンズが認めた5つのデバイス上でいつでも本商品を利用される権限が与えられるものとします。

お客様には、個人的、非商用目的に限って本商品のエクスポート、書き込み(該当するコンテンツの場合)または複製を行う権利が与えられるものとします。ただし、録画のデジタルコンテンツについては、書き込みを行うことはできません。

[以下省略]

DRM はこうした許諾条件を意図的に、あるいは意図せずに*破る行為に対して著作物を保護するための仕組みである。DRM の方式に関しては現在のところ業界のコンセンサスは存在せず、有力企業が独自の方式を広めようとしている。例えば Apple は FairPlay、Microsoft は Windows Media DRM、ソニーは OpenMG を採用している。

* ここに挙げた Apple の許諾条件は目につきにくい場所に置かれている。そして意味が分かりづらい。例えば5つのデバイスとは何の事なのかが書かれていない。また「書き込み」とは何を意味しているのかも分からない。こうした問題は Apple だけではない。そのために許諾条件を理解しないで使っている利用者も多いであろう。

drm

図1. バソコンや携帯プレイヤーに曲が蓄積される時の DRM の役割

図1 に音楽配信における DRM の動きを示す。CD の曲は DRM を持っていない。従って音楽データはパソコンにも携帯プレヤーにも著作権の保護なしに転送される。他方ネット上のミュージックストアから購入した曲は DRM によって著作権の保護が掛けられている。DRM はパソコンに蓄積される時にも携帯プレイヤーに転送される時にも付いて回る。DRM 付の曲は他人に渡しても聴く事はできない。

さて Apple は MPEG-4 の規格化に対して大きな役割を果たしてきた。業界が規格を持つ事によって業界は安心して MPEG-4 コンテンツを作成し、また消費者も安心して MPEG-4 コンテンツを買う事ができるのである。しかし現状では、こうした事が言えるのは著作権保護のかかっていない MPEG-4 コンテンツの場合だけである。MPEG-4 では DRM の規格化は行われず著作権保護の方式は MPEG-4 コンテンツを配布する企業に任せられた*。そして DRM を巡る覇権争いが開始されたのである。

* DRM を規格化しなかったのは必ずしも悪い事ではない。保護の方法に柔軟性を持たせる十分な理由が存在すると思える。

DRM はインターネットにおいて展開されつつある有料著作物配布ビジネスのキーとなる重要技術である。これを制する者がこの分野の覇者となる。Microsoft は Windows を武器に、Sony はブランド力と傘下のレーベルを武器に、そして Apple は大成功を納めた iPod を武器に争い、その結果 Apple が完勝したかに見える。これが現在までの情勢なのである。

さてネットの記事によるとフランス国会(下院)に提出された法案は DRM の相互運用をはかる事を目的としている。この方向は RealNetworks 社が iTMS の登場によって苦境に落ちいった際に Apple に打診し、拒否された方向である。

Apple が DRM で独占的な地位を占めるのか否かはまだはっきりしない。独占状態になればアメリカなどでもフランスと同様な動きが現れるであろう。それは消費者利益を擁護する方向である。しかし現在それを行う事が消費者利益にかなっているか否かは微妙なところである...

DRM の技術的な側面に関しては竹松昇氏の解説3を参考にされたい。

参考 URL

  1. http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0603/22/news009.html
  2. http://www.apple.com/jp/support/itunes/legal/terms.html
  3. 竹松昇: 第27回 ダウンロード販売を支えるデジタル著作権管理技術「DRM」(http://www.mpeg.co.jp/libraries/mpeg_labo/winPC_27.html)

囲い込み合戦

2006/03/26

現状では、携帯プレイヤーと曲管理ソフトとミュージックストアの 3 者は一体のものとして機能している。この 3 者を結びつけているのは DRM である。

企業 DRM 携帯プレイヤー 曲管理ソフト ミュージックストア
Apple FairPlay iPod iTunes iTunes Music Store
Sony openMG 主にソニー製品1 SonicStage Mora3
Microsoft WMA4 DRM その他2 WMP5 10 主に MSN Music4

表1. 携帯プレイヤー、曲管理ソフト、ミュージックストアの関係

注1 openMG 対甥携帯プレヤー
注2 WMA 対応携帯プレヤー 
注3 LabelGate(ソニー系の) が運営
注4 Windows Media Audio
注5 Windows Media Player

携帯プレイヤーと曲管理ソフトとミュージックストアの 3 者が密接に結びついているのは DRM の性格から発生する法律上の問題*もあるが、それを利用して消費者を囲い込もうという企業側の戦略がある。

注* 日本の場合には著作権法第120条の2が DRM による囲い込みを可能にしていると思われる。

iPod の市場シェア

2006/03/26

携帯プレイヤーの代表は Apple の iPod である。2005 年 9 月から 12 月の統計では iPod が半分以上の市場シェアを占めており、次にソニーの Walkman シリーズ(openMG 対応プレイヤ)が続く。残りの小さなシェアを多数の「その他」のメーカー(WMA 対応プレイヤー)が競っている。

bnc

図1. BNC ランキング1

「BNCランキング」とは日本の量販店の POS データから得られた売れ筋商品のランキングである3。BNC ランキングの最新データはトップ 10 までを公表している。これによると最近の統計(2006年3月6日 -12日)でも公表されている全ての機種を iPod シリーズが独占している2。BNC ランキングは日本における統計である。世界的にはこの差はもっと大きいであろう。参考URLの4,5もシェアについて報じている。

参考 URL

  1. http://bcnranking.jp/flash/09-00005648.html
  2. http://bcnranking.jp/ranking/02-00007044.html
  3. http://bcnranking.jp/bcn/07-00000272.html
  4. http://www.computernews.com/marketview/newsimages/2005_9_9.pdf
  5. http://review.ascii24.com/db/review/ce/mp3/2005/12/12/659534-000.html

曲管理ソフトの役割

2006/03/26

表1で曲管理ソフトと書いたのは PC で動作する音楽再生・管理ソフトの事である。例えば iTunes は次のような機能を持っている。

など。各管理ソフトの詳細については次の URL が役に立つ。

ミュージックストア

表1で分かるように買った携帯プレイヤーによって曲管理ソフトが定まり、曲管理ソフトによってミュージックストアが定まる構図になっている。従って携帯プレイヤーの販売台数のシェアがそのままミュージックストアの利用者シェアを決定する。次に日本における主なミュージックストアの曲数と URL を載せる。

ミュージックストア 曲数* URL
iTunes Music Store 100万曲1 http://www.apple.com/jp/itunes/music/
Mora 50万曲2 http://mora.jp
MSN Music 10万曲3 http://music.msn.co.jp/

表2. ミュージックストアの曲数とホームページ
(利用者は曲管理ソフトからアクセスする。)

注* 曲数の意味ははっきりしない。すなわち、データベースに登録された曲数なのか、それとも配信権を持っている曲数なのかが曖昧である。
注1 http://www.apple.com/jp/itunes/music/ による。現在ではもっと増えているはずである。
注2 http://www.labelgate.co.jp/ による。
注3 http://www.uta-net.com/dmg/store_guide.html による。

ミュージックストアの比較サイトは多数あるが、次はその例である。

囲い込みを潜る次のような裏技が紹介されている。一度 CD に焼きなさいと言う訳である。

ミュージックストアの魅力は曲数、価格、利用条件、対応携帯プレイヤーで定まる。Apple がこの分野で成功したのは iPod の魅力だけではなく、曲数、価格、利用条件のいずれにおいても既存のミュージックストアを大きく引き離していたからである。特に利用条件が大きく緩和された。ネットに対して音楽業界が抱いてきた嫌悪感を考えると、驚くべき内容である。

音楽配信ビジネスを切り開いた Apple

利用者サイドに立った Apple の利用条件を実現するには、音楽業界を説得するするための粘り強い努力が必要だったのである。何しろ Apple が目指すのは普通に使っている限り不便を感じない利用許諾条件である。しかもその許諾条件の中には、配信された音楽の(音楽業界が最も嫌う) CD-R への焼き付けを許可する条項が含まれている。

日経ナビには Apple が iPod で成功を収めるに至った経緯が感動的なタッチで書かれている1,2

「Apple社は,当時のダウンロード・サービスが置かれたがんじがらめの状況を,ユーザーのために解きほぐせばよかった。もちろん容易に達成できないことは百も承知だった。しかし,これを実現しない限り成功はないとみた。」

Apple は音楽業界と IT 業界に有料音楽配信がビジネスになることを証明した。Apple の成功を受けて多数の音楽業界が Apple に曲を提供した。さらに Apple に負けじと他の IT 企業も次々と配信事業に進出したのである。

2003年4月、アップルコンピュータの iTunes Music Store がサービスを始める1。(米国)
2004年3月、レーベルゲート*、音楽ネット配信サービス「Mora」のサービス開始7。(日本)
2004年9月、Microsoft「MSN Music」を開始3。(米国)
2004年9月、AVEX は CCCD の弾力的運用(撤退宣言)を表明。ソニーも CCCD からの撤退表明。(日本)
2004年10月、レーベルゲート*、WMA対応の音楽配信サービス「MusicDrop」を開始6。(日本)
2004年10月、Microsoft「MSN ミュージック」を開始4。(日本)
2005年8月、iTunes Music Store が日本でも営業開始。

注* 日本最大の PC 向け音楽配信会社8,9

参考 URL

  1. http://techon.nikkeibp.co.jp/NE/navi2006/s2/ipod_9.html
  2. http://techon.nikkeibp.co.jp/NE/navi2006/s2/ipod_10.html
  3. http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/3620182.stm
  4. http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/10/20/5071.html
  5. http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0410/13/news015.html
  6. http://ascii24.com/news/i/serv/article/2004/10/20/652116-000.html
  7. http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040331/mora.htm
  8. http://www.labelgate.co.jp
  9. http://ja.wikipedia.org/wiki/レーベルゲート

2000 年頃

2006/04/09

ここでは iTMS が日本で開始された 2005 年までの、ネット配信事業に影響を与えたと思われる出来事を整理する。

1993 MP3 規格1,5
1996 年 CD-R 登場2
1996 年に家庭用の DVD プレイヤーが発売
1998 この頃から CD 販売が減少7
1998 いくつかの会社から MP3 プレイヤー発売
この頃、個人レベルでも大容量(数10GB)のハードディスクが普及しつつあった
またインターネット接続のブロードバンド環境*が整いつつあった

Apple その他
1999 Napster 登場3
MPEG4 規格化
2000 iTunes をリリース 米レコード協会地裁にNapsterを提訴、停止命令下る4
2001 iPod を販売 東芝 1.8インチ HDD 出荷開始
2002 CCCD 登場
2003 iTMS を開始(米国) Winny の利用者が著作権法違反容疑で逮捕される
2004 Winny の作者が著作権法違反幇助容疑で逮捕される
2005 iTMS 日本でも開始

注* 128Kbps 以上の通信速度の場合にブロードバンドと呼ばれる事が多い6

日本の iTMS 開始が与えた音楽のネット販売(国内のみ)の影響を示す。この表はパソコンへの販売であり、携帯電話を含んでいない。

時期 売り上げ金額
2005年1月〜2005年3月 310,330
2005年4月〜2005年6月 233,124
2005年7月〜2005年9月 436,708
2005年10月〜2005年12月 870,454

インターネット・ダウンロード(売り上げ金額、単位: 千円)8

iTMS の開始は 2005年8月4日である。

参考URL

  1. http://www.chiariglione.org/mpeg/
  2. http://ja.wikipedia.org/wiki/CD-R
  3. http://ja.wikipedia.org/wiki/Napster
  4. http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/0727/nap.htm
  5. http://ja.wikipedia.org/wiki/MP3
  6. http://ja.wikipedia.org/wiki/ブロードバンドインターネット接続
  7. http://www.riaj.or.jp/data/cd_all/cd_all_m.html
  8. http://www.riaj.or.jp/data/download/index.html

音楽流通と著作権

歌詞データベース

2006/04/03

音楽を聴けば歌詞を知りたいと思うのは人情である。特に音楽のネット配信の場合には CD と異なり歌詞を配信してくれない。そこで最近の OSX 10.4 では iTunes で曲を演奏中に F12 キーを押すと次の左図が表れ歌詞を表示するボードが準備された。しかし実際にはデータは揃っていない。そこでボードの左下の i をクリックすると裏面が表れ Google を探索する事ができる。

song1.png song2.png
表面 裏面

歌手や曲が生まれた背景の解説は現在ではネット上の解説の方が CD に添えられている解説よりも詳しく面白い。しかしそこには肝心の歌詞が書かれていない。歌詞を載せながらの解説は著作権法に触れるのである。では歌詞はどうすれば手に入るのだろうか?

幸い最近はネット上に歌詞データベースが構築されつつあり無料で公開されている。以下はその代表的な例である。

「歌詞データベース」で検索すると、この他にも多数のサイトを見つける事ができるであろう。ここに挙げた例はいずれも JASRAC(日本音楽著作権協会) の許諾を得ている。許諾の手続きは JASRAC のホームページ1に載っている。

ところでこうしたデータベースはサイトの運営者が苦労して打ち込んでいったものと思われる。その苦労は並大抵のものではないはずで、個人の趣味の範囲を超えている。何がしかの収益を上げてビジネスとして行わない限りデータベースを構築する事は不可能であろう。幸いな事に現在ではウェブの世界に「アフィリエイト」の制度が根付いている。例えば歌詞と共に関連する CD を Amazon で買うように仕向ければ Amazon から謝礼を貰えるのである。

そう歌詞の公開は音楽 CD のプロモーションに役立つのである。公開された歌詞を見て CD の売り上げが上がれば作詞家はより多くの収入を手にする事ができる。公開されている歌詞に誰かが新しい曲を付けるかも知れない。JASRAC も作詞家も利用者も皆んなが得するはずである。こんな事がどうして今頃ようやく行われ出したのであろうか?

ウェブの記事を読むと Uta-Net が開設されたのは 2001 年である6。2001 年は音楽著作物のネット配信に関する JASRAC の新しいルールが実施に移された年である。これはインターネット時代の音楽ビジネスを展望するネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC)が JASRAC に協議を申し入れ、長い議論の末 2000 年にようやく合意されたルールである7,8,9,10

JASRAC の許諾条件と利用料金は JASRAC のホームページで手に入る2。これによると歌詞のネット公開に関しては、データを受信側のプリンタで印刷することができないストリーム形式の場合には当面つぎの規則を適用することになっている。

都度情報料が課される方式による場合の当該著作物(コンテンツ)の使用料は、当該情報料の4.5%又は4円50銭のいずれか多い額に当該著作物(コンテンツ)の月間の総リクエスト回数を乗じて得た額又は下表の最低使用料の額のいずれか多い額とする。なお、情報料及び広告料等収入がない場合の使用料は、年額50,000円とする。

ここには Uta-Net のように情報料が無料で、かつ広告収入がある場合の扱いが述べられていないが、他のページ3にはそのようなケースについても表形式で示されている。どうやら広告料収入の 3.5% を支払っているらしい。

NMRC と JASRAC の 2000 年合意には利用者サイドの意見が反映されていない*。今やインターネットは無数の個人が支えていると言ってよい状況である。個人の自作 MIDI の扱いは未だに窮屈である**。もう個人でもインターネットではラジオ放送局を開設できる時代なのである。個人のインターネットテレビ放送も盛んに行われる時代も近い将来に到来するであろう。非営利目的で行われる個人の情報発信を魅力的なものにするためには、もっと緩やかな著作権の適用が求められていると思われる。

注* この合意には個人が非営利目的で曲をサーバー上に置く場合の JASRAC に支払う利用料金が示されているが、この金額は個人が JASRAC の許諾を得ないで音楽著作物を公開したときの損害賠償金額の算定に使われている。
注** 著作権が存在する楽譜の MIDI データをネットで公開した場合に JASRAC から高額の著作権料が請求されるようになった。JASRAC が独占的地位を利用して価格を自由に設定している事には問題があろう。もっとも著作権のある楽譜の MIDI に関しては Roland14 と YAMAHA15 の協力によってほぼ解決されているようだ12,13

JASRAC は権利関係のデータベースを持っており*、誰でも無料で見る事ができる。JASRAC が仕事をする上でこのデータベースは不可欠であるが、歌詞データベースや楽譜データベースは持っていない。しかし音楽家同士の著作権に関するトラブルを解決するためにはこれらのデータベースも必要なはずである。

注* 2005年3月現在では 700万件のうちの 226万作品がデータベースに登録されている4。作品数が少ないのは 1999 年に11ようやくサービスが始まったからであろう。

参考 URL

  1. http://www.jasrac.or.jp/
  2. http://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/royalty/royalty.pdf
  3. http://www.jasrac.or.jp/network/contents/tariff.html
  4. http://www.jasrac.or.jp/profile/outline/index.html
  5. http://www2.jasrac.or.jp/
  6. http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0525/uta.htm
  7. http://nmrc.jp/
  8. http://nmrc.jp/towa.html
  9. http://www.nmrc.jp/k2000/houdou08-17.html
  10. http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/0817/jasnmrc.htm
  11. http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/1999/0118/jasdb.htm
  12. http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0917/fmidi.htm
  13. http://forum.nifty.com/fmidi/
  14. http://www.roland.co.jp
  15. http://www.yamaha.co.jp

著作権料

2006/04/16 小売店のマージンに関するコメントを追加
2006/04/06 誤解のないように図を修正
2006/04/05

首相官邸の知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会に次の意見が寄せられている1:

エンタテイメント業界における投資状況と回収状況の資料が決定的に不足している。

実際、この問題をウェブで調べてみても資料が出て来ない。しかし回収状況と言わなくても消費者が支払っているお金が誰にいくら渡っているのか理解しておく事が権利者と消費者の相互理解のために必要だと思われる。

次に示すのは私が理解している投資と利益循環の概念図である。

license

CD 販売などに伴う利益の流れの概念図

なお音楽出版協会や日本レコード協会にも概念図が示されている2,3のでそれらも合わせて参考にしてほしい。

最初にいくらかのコメントを載せる。

JASRAC に支払われる著作権料に関しては「利用料規定」として公開されている4。これによると CD のレンタルの場合には 1 アルバム当り 70 円であり、包括契約すれば 1 アルバム当り 40 円程度にまで下がる。しかし実際にはこの他に演奏家に対して 50 円、レコード制作者に対して 50 円が支払われていると言う5

しかしインタラクティブ配信に関しては全く闇の中だ。「利用規程」によると JASRAC への支払いは 1 曲の価格の 7.5 % あるいは 7.7 円(大きい方が採用される)である。ここだけを見ると非常に安いように見えるのであるが、実際には音楽出版社の個別の許諾が必要なため、そこで販売価格と音楽出版社への支払額が決まると思われる。

オリコン社長の小池氏は「音楽配信であれば、レコード会社には7割以上リターンがありますから」と述べている6。この見積りは業界内部からのものであるから信用できるであろう。CD の場合には小売店に 30% が相場らしい***,6。さらに流通費用や CD プレス費用やパッケージ費用*などが発生するので、レコード会社の実質取り分は 50% 程度であろうから**、ネットでの販売価格を CD の小売価格に合わせればレコード会社にとって旨い話である。(小池氏はレンタルに対抗するためにも値下げが必要であると話している。)

注* プレス費用 + パッケージ費用 は 1 万枚作成すれば 1 枚あたり 200 円と見積もってよいであろう7
注** ここからさらに様々な費用が発生するが、それらはネット配信であろうと CD 販売であろうと違わないであろう。
注*** 我が大学の専門家に聞いてみたところ、小売店のマージンは一般的には25%らしい。(2006/04/16)

CD の価格内訳に関してはネットにも何人かが発言している8,9,10。但し関係者の話ではない。もっと詳しい情報をお持ちの方はメールを下さい。

参考 URL

  1. http://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/contents/dai7/7siryou4.pdf
  2. http://www.mpaj.or.jp/whats/flow/index.html
  3. http://www.riaj.or.jp/makingcd/index.html
  4. http://www.jasrac.or.jp/profile/covenant/pdf/royalty/royalty.pdf
  5. http://cdvnet.jp/modules/rental/#05
  6. http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NPC/NEWS/20050812/166342/
  7. http://www.olympia-print.co.jp/cd/kakaku.html
  8. http://garakutagoya.kt.fc2.com/music/kakaku.htm
  9. http://www.boundbox.jp/modules/wordpress/archives/2005/08/06/66/
  10. http://blog.goo.ne.jp/shin-ususio/e/1b7a504f798796edc5385558b6333cd1

アルバムの価格

2006/04/06

「iTMS は CD に比べてちっとも安くない」と思っていたが、注目していたアルバムが偏っていただけであった。私の欲しいアルバムはなぜか高い。しかしよく調べてみると確かに安いアルバムもある。

アーチスト アルバム iTMS Amazon
椎名林檎 幸福論 ¥600 ¥1029
椎名林檎 罪と罰 ¥600 ¥1200
中島みゆき 転生 ¥2000 ¥3150
カルメン・マキ&オズ カルメン・マキ&オズ ¥2000 ¥1529
Böhm Beethoven: Symphony No. 9 ¥1500 $9.98

カルメン・マキってどうしてこんなに高いのだろうね...

さて私の穿った見方であるが、椎名林檎のアルバムの価格の意味を考えてみる。CD を買ってリッピングしてブックオフに持っていくと差額はいくらか?

この意味で CD よりもネット配信の方が安ければ CD の中古流通が防げるというものだ。何しろ最高裁判決でソフトの中古販売は合法と出たからね1。もっとも中古の流通量は 20% 程度で2たいした事はないから穿ち過ぎかも知れない。

クラシックはデータベースへの登録が後回しになるだろうと半ば諦めていたのであるが、カラヤンが 155 アルバムも登録されているに気づいた。

  1. http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20020425/arts.htm
  2. http://www.arts.or.jp/docs/hanron.pdf

著作権法

2006/04/09

私は法律の専門家ではない。だから私の解説に対しては責任を負わない。できるだけの努力はするが判断するのは読者である。また私の解説はかなり荒っぽい。正確な事は直接法律を読んでほしい。また著作権法は頻繁に変わっているので今日の知識は明日には古くなっているかも知れない。法律の文面は「著作権法」(http://www.ron.gr.jp/law/law/chosaku.htm)を参考にしている。

著作者の権利は大きく 2 つに分かれる。

著作物

この法律の中で最も難しい部分である。次のように述べられている。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

つまり

「思想または感情を創作的に」の部分が実際上どれだけ意味があるかは疑わしい。裁判所が著作物の芸術性を判断できるとは思わないからだ。

著作者人格権

著作者人格権は著作者の人格を守るための権利であり、著作物が生成されたその瞬間に発生する。法律的手続きは不要である。権利の内容は次の 3 つである。

著作者人格権は譲渡できない。

著作権

これは著作者の経済的権利であり、譲渡できる。以下のような権利が含まれている。

など。他人の著作物を勝手にネットに載せると公衆送信権違反で訴えられる。

著作権の制限

著作権は公共の利益との関係で制限される。例えば

など。但し目的上正当な範囲内での利用である。出典の明示が求められる。

大学などでは学園祭での音楽の演奏が問題になる。具体的なケースとしては、会場を設けて演奏会を開く場合と、学園祭の BGM としての演奏が問題である。次の URL が参考になる。

私的複製

私的使用を目的とした複製は許される

第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

これは利用者の権利ではないので、CCCD のように著者権者側が複製に対するプロテクトを掛けても構わない。そのような著作物が商業上成功するか否かはマーケットが決める事であろう。

「その他これに準ずる限られた範囲内」の解釈は微妙である。ネットで調べると、「ごく限られた友人程度は OK 」が一般的な解釈のようだ。例えば以下の URL を見よ。

もっとも大学などがこうした私的複製の場所となっていれば著作権者からクレームが来ると思われる。友人間の私的複製の問題を学生にどのように伝えるかは難しい問題であるが

と言うことであろうか? 現代社会では人間的な関係は稀薄になり、その事が様々な社会問題を生み出している。音楽出版社がこの問題に対してどのように社会貢献できるであろうか? 友人の家に遊びに行き、音楽を語らいながら発生する私的複製が人間関係の回復に役に立つならば、音楽出版社側も社会貢献だと思っておおらかに見て欲しいと言うのが私の気持ちである。

保護期間

これらの権利は著作者の死後 50 年(団体による著作物であれば公表後 50 年)続く。最近、映画の著作権保護期間が 70 年に延長された。

私が著作権法に関して違和感を抱くのは保護期間の長さである。著作者人格権に関しては著作者の死後 50 年は変だとは思わない。著作者にとって最も重要な権利は公表しない権利である。だから陶芸家などは気に入らない作品はたたき割ってしまう。文学などでは下手に公表するとモデルになった人物あるいはその親族から訴訟を起こされることもある。従って関係者が歴史上の人物になるまで公表権が作者の親族によってコントロールされる必要があろう。

しかし一旦公表された著作物に対する著作権は財産権の意味しか残っていない。この部分も 50 年間の保護を受けるのだから驚きである。特許と同様に、公表後 20 年程度で消滅するようにした方が好ましいのではないかと思われる。特許権の期間が短いのは「工業の発展との調和」の視点が入っているからである1。著作物についても「文化の発展との調和」の視点を取り入れて欲しいものである。

参考URL

  1. http://www.ntspat.co.jp/rpt/toda.pdf

著作権法違反事件

ここでは日本での著作権法違反訴訟をとりあげる。

Winny 裁判

2006/04/15

ファイル交換ソフト Winny を使って著作権法で保護されている著作物をネットに流した事件。2004年に京都地方裁判所で判決、有罪。Winny の作者のK氏は犯罪幇助の罪で裁判が継続中である。

私見であるが、K氏は科学者や技術者の社会的責任について考えてほしい。自分が生み出してものがどのように利用される可能性があるのか、現実はどうかについて関心を持つ必要があるのである。

参考URL

  1. http://internet.watch.impress.co.jp/static/column/jiken/2004/09/10/
  2. http://home.att.ne.jp/red/kakumei/winny-taiho.htm
  3. http://courtdomino2.courts.go.jp/kshanrei.nsf/c1eea0afce437e4949256b510052d736/75f4203576aa0a5d49256f77000e906b?OpenDocument

ダンス教室訴訟

2006/04/15

日本音楽著作権協会が名古屋の7つのダンス教室に対して、演奏しているダンス曲の使用料を求めた訴訟。2004 年に判決が確定。過去10年間分の著作権使用料として 3646 万円の支払いを命じる5

類似の事件として喫茶店における CD 演奏、ジャズ喫茶におけるジャズの実演の差し止めなどが発生している。

参考URL

  1. http://www.jasrac.or.jp/release/04/03_1.html
  2. http://www.jasrac.or.jp/release/04/09_1.html
  3. http://www.jasrac.or.jp/profile/outline/history.html
  4. http://www.jasrac.or.jp/info/bgm/index.html
  5. http://www.translan.com/jucc/precedent-2004-03-04b.html

閉鎖に追い込まれるフラッシュ

2006/14/16

ネットの中にはとても面白いフラッシュがある。これはそうした物の一つである。

次のサイトはフラッシュを集めているので関心があれば見たら良い。

多くのフラッシュは音楽をBGMとして利用しており、中にはせっかく独創的なフラッシュを作っても JASRAC から著作権法違反の警告を受け、次のように削除されてしまう。

このようにして死んでいった多数のフラッシュがネット上に転がっている。

ところが JASRAC に許諾の手続きをとると、フラッシュに関しては手続きの体制が整っていないからダメだという1

JASRAC がこのように言わざるを得ない事情に関して次のブログが参考になる。

但しこれは推測である。JASRAC 側からの正式な説明が望まれる。現在(2006/04/16)のところ JASRAC の FAQ には動画に伴う音楽配信に関して次のように書かれているだけである:

質問: 音楽を使ったムービーをオンデマンドで配信する場合はどのようにしたら良いですか?
回答: 動画に伴うJASRACレパートリーの利用について、取り扱いの一部が決まっていないため現在のところ許諾することが出来ません。原則的にはご利用はお控えいただくようお願いしています。インターネットCM配信等、ご利用いただくことができるものも一部ございますので、詳しくはJASRACにお問い合わせください。その際には、配信の内容がわかるような資料をご用意ください

参考URL

  1. http://blog.so-net.ne.jp/blr/2005-10-18

のまネコ問題

2006/04/16

これはネットで人気のキャラクターである「モナー」をまねた「のまネコ」を企業が著作権を主張し図形商標登録した事件である。経過の概要は

に解説されている。結果は企業側の謝罪と図形商標登録の取り下げに終わった。

このケースでは相手が2チャンネルという巨大なネットコミュニティーであったために企業側が折れた形になったが、相手が個人の場合には結果はどのようになったかわからない。

個人がネットで発表した作品を企業がまねて著作権を主張し、逆に原著作者が著作権法違反で訴えられる可能性があるのである。これを防ぐためには、自分が著作者であることを証明する材料を持っていなくてはならない。例えば写真や音楽などでは品質を落としたものを公表し、元になった著作物は保管するなどである。

著作権法の未来を考える

音楽に自由を

2006/04/15

著作権法に定める著作権(いわゆるコピーライト)は著作者に与えられる権利の上限を定めている。著作者は著作権法で定める枠の中で自由に利用条件を設定できる。そして実際に緩やかな条件で著作物を配布している著作者も存在する。

コンピュータの世界では 1980 年頃から、著作権で著作物の再利用を制限する事に疑問がもたれ始め、複製権(コピーライト)を主張しない多数のプログラムが出回った。ソースコードはオープン、再配布自由、再利用自由のプログラムがインターネットの発展を支えたのである。この流れは現在でもネットコミュニティで強い支持を受けている。

音楽の世界では著作権で保護された多数の曲が 2000 年前後にネットに流れ、それらは摘発の対象となった。しかしホームページや映像のBGMなどに音楽を使いたいとする要求は強く、著作権法に触れないで自由に使える音楽が登場して来た。それらの多くは著作権が切れた曲を MIDI にしたものである。

以上の他に類似のサイトは多数あり、例えば http://www.gekka.com/sound.html を見たら良い。

またちょつと変わったものとしてダンス教室で自由に使える CD が日本ダンス協会連合会から出版されている。

この CD は JASRAC がダンス教室を著作権法違反で訴えた事が契機になって誕生していった1。つまりダンス教室側が JASRAC の許諾料が高すぎると考え、自分たちで CD を作る方向へ動いた訳である。

やはり曲自体は有料であるが、ホームページの BGM などに自由に使える著作権フリーの CD が売られ始めている。

著作権フリーは JASRAC に対抗する新たなビジネスとして動き出しているのである。

参考 URL

  1. http://www.ballroom-j.com/law/index.html

音楽家に自由を

2006/04/15

1998 年に坂本龍一氏は「音楽著作権の独占管理を改めよ」を朝日新聞社の論壇に発表している1。これは音楽家が置かれて来た状況を知る上で必読の文書である。この中で坂本氏は次の論点を述べている:

実際、現在も JASRAC は著作権者に許諾条件の自由を許していない。JASRAC は権利者との契約形態について次のように説明している2

JASRACと委託者は信託契約という契約を締結しており、その約款では委託者が有する著作権及び今後取得するであろう著作権のすべてをJASRACに信託することを約束しています。

つまり作詞家や作曲は JASRAC への権利の丸投げを強制されているのである。

坂本氏は JASRAC が管理業務を独占できた背景を次のように指摘する。

仲介業務を行おうとする者は、文化庁長官の許可を受けなければならない。... 許可を受けているのはJASRACだけという独占状態である。

きっと坂本氏の声が国会を動かしたのであろう。この独占状態は2002年の法改正で崩壊する。著作権等管理事業法3が施行され、文化庁長官の「許可」ではなく「認可」に緩められたのである。

新しい体制の下で多様な許諾条件が許されるようになったのであろうか? まだ始まったばかりで結論を出すのは早すぎる。許諾条件を緩めると多くの曲が売れるようになるはずである。その事が著作者の収入に反映されるような、きめの細かい利用料金の分配方式が要求されるであろう。なぜならドンブリ方式の下では著作者は許諾条件を緩めるだけ損であるから、許諾条件を最大限に強める方向に動くはずである。なお JASRAC による分配の問題に関しては玉木氏が不満を述べている4

  1. http://www.kab.com/liberte/rondan.html
  2. http://www.ron.gr.jp/law/law/chosak_k.htm
  3. http://www.netlaw.co.jp/syocho/jigyou/index.html
  4. http://www.archi-music.com/tamaki/copyright.html

オーディオ環境

スピーカ

Fostex PM0.4

2006/04/05

我が家のオーディオ環境を紹介するが、自慢するような話ではない。私は基本的には金をかけない。

speeker

我が家の居間のオーディオ環境

最近は多くの家庭で薄型のテレビが使われているらしいが、ご覧の通り古いブラウン管式のテレビで頑張っている。薄型のテレビが流行しているからと言って、まだ使える物を捨てるのは嫌いである。2011年まで頑張る。そして壁掛けテレビを買う。

スピーカは Fostex の PM0.4 である。

これはアクティブスピーカで、極く最近発売された。とても気に入っている。私には十分すぎる程の音質である。サイズも小さく値段も手頃である。すっかり気に入って最近はヘッドフォンを止めてこればかり聴いている。スピーカだけでどうやって聴くのかって?

これは AirMac Express と繋がっている。左に見える白い四角いのが AirMac Express である。これで居間兼台所の無線環境が実現する。スピーカはノートパソコンからワイアレス LAN でコントロールする。Mac でも Windows でも iTunes をインストールすればスピーカを鳴らす事ができる。

iTunes-remote

iTunes からスピーカを切り替えられる。

AirMac Express の使い方はとても簡単で、無線LANの設定をすれば自動的に iTunes が検出してくれる。検出したら図のように「コンピュータ」のメニューが表れる。これをマウスで切り替える。

Bose MediaMate II

2006/04/06

最近はパソコン用の小型スピーカがよく売れるらしい。音が出ればよしと言うものから、それなりに音質に配慮したものまで様々である。

note-PC

Bose MediaMate II

この写真の Bose MediaMate II は実売価格 12000円ほど。スピーカが小さい程、音作りが難しくなる。買うときには音質を取るのか手軽さを取るのかを考えた方が良い。このスピーカについては言えば、このサイズのスピーカにしては低音は出るが、私には多少違和感がある。(まあ贅沢は言えないね)

ポータビリティと音質を共に追求したいのなら Bose M3 が候補に挙がる。但し値段は高い。

Sony SRS-T88

2006/04/09

電池駆動でも比較的出力が高くてボータビリティのよいスピーカを求めて買ったのが Sony SRS-T88。実売価格は 7000 円程である。

もともとこの手のスピーカに音質はあまり期待していなかったが、それでも最初にこのスピーカを聴いたときには思わず顔をしかめた。高音部がキンキンするのである。そのためしばらく使用を諦めていたが、なんとかなるかもと思い工夫をしてみた。

高音部を殺す事にした。そのための手軽な方法はスピーカを顔の方向に向けないことだ。設置の仕方をいろいろ試したあげく、写真のようにノートパソコンの液晶パネル面の下に置くのが良いという結論に至った。

srs-t88

これだけの事で音質はかなり柔らかくなり聞き疲れしない。また低音の響きがよくなり、音量も大きくなる。少人数のミーティングにも使えそうだ。「うまく使えば悪くないよ。」と言えそうである。

面白い事に SRS-T88 はスピーカを立てにくい。安定しないのである。初めからこの写真のような使い方を想定しているのなら、説明書に書いて欲しかったね。

一般的な傾向としてノートパソコンの内蔵スピーカの音はあまりにもひどい。AV をコンセプトとしている商品ですらそうである。単にスピーカを付けるだけでは良い音が出るはずはない。ノートパソコン全体が音響装置だと考えて設計しないとダメなのであろう。Apple のノートパソコンはそのような設計に近いのかもしれない。結構音量は大きく、良い音を出すのだ。