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原子力発電は本当に安いのか?

目次

2012/10/23

4年生のゼミで、このテーマを採り上げました。

電力10社の電気料金

次の図は、2010年度の電力10社の、電気使用量と電気料金との関係をグラフで表しています。家庭でポピュラーな40A契約の場合のグラフです。
2010年度のデータは2010年度の電力各社のホームページを参照しています。現在では2010年度のデータは各社のホームページには無いのですが、過去のホームページの内容は
	http://archive.org/web/
で見る事ができます。

次のグラフはゼミ生の協力によって作成されたものです。


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グラフ作成には次の表が使われています。「基本料金」以外の数字は 1 kWh 当たりの料金です。

会社名 北海道電力 東北電力 東京電力 中部電力 北陸電力 関西電力 四国電力 中国電力 九州電力 沖縄電力
基本料金 1302 1260 1092 1092 924 1512 1428 1554 1134 383.69
0 18.27 16.81 17.87 17.05 16.92 16.76 15.76 17.08 16.10 0
10 21.86
120 23.68 22.56 22.86 21.09 20.62 19.83 20.74 22.90 20.34 27.87
300 25.37 24.17 24.13 22.52 22.26 20.70 22.51 24.69 21.72 29.04
沖縄電気の料金体系は他と異なっています。最初の 10 kWh までは 383.69 円であり、10 kWh を超えると 120 kWh までの間は 1 kWh 当たり 21.86 円です。

燃料調整費は計算には含まれていません。あくまでホームページの料金表です。

ネット上では、「沖縄電力は電気料金が高い、原子力発電をしていないからだ」と言った議論が見られますが、このグラフを見ながら議論をしたら良いでしょう。(高い事の根拠として、しばしば 300 kWh を超えた時の 1 kWh 当たりの単価が挙げられます)

原発に依存すれば電気料金は安くなるのか?

以下に 2010 年度の、電力10社の原発依存率と電気料金との関係を示す。
40A契約の下で、2つのケース(300kWhと400kWh)を採り上げる。
なお、原発依存率に関しては「毎日新聞」(2012/05/05)の紹介がネット上にあったので注1、それを利用した。

電源構成		原子力	火力	水力	他
北海道電力	44	39	15	2
東北電力		26	59	13	2
東京電力		28	65	6	1
中部電力		15	76	8	1
北陸電力		28	47	24	1
関西電力		51	38	11	0
中国電力		3	90	6	1
四国電力		43	47	9	1
九州電力		39	53	5	3
沖縄電力		0	98	0	2
注1: http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4111.html


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これらの図からは、「原発に依存すれば電気料金は安くなる」と主張するのはかなり難しいと思える。
電気料金の主な違いは...営業努力の違いではないかね...

家庭の電気使用量は?

電気料金を 300kWh と 400kWh の場合について比較したが、この2つを採り上げたのは妥当か?
その判断のために、都道府県別の電気使用量に関するグラフを示す。このグラフでは、47都道府県における1世帯当たりの電気使用量を大きい順に並べている。


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電気使用量の大きい順に都道府県名を並べると次のようになっている。

福井 	富山 	石川 	滋賀 	島根 	山形 	鳥取 	和歌山 	佐賀 	岐阜
長野 	徳島 	岡山 	新潟 	香川 	山梨 	群馬 	栃木 	奈良 	静岡
三重 	福島 	岩手 	広島 	京都 	茨城 	秋田 	愛知 	宮城 	兵庫
山口 	熊本 	大分 	愛媛 	沖縄 	大阪 	福岡 	高知 	長崎 	青森
埼玉 	宮崎 	千葉 	東京 	鹿児島 	神奈川 	北海道
北陸3県が何故か突出している。これは北陸電力の営業努力か?

図の基になったデータは

	http://www.ecotokumirai.com/date.pdf
である。ここには
各都道府県の電灯使用量総量は、電気事業連合会編「電気事業便覧」の平成21年度のDATAを採用
と説明されている。元のデータの標題は「1世帯当たりの電灯使用量」である。「電灯使用量」の言い方は電力会社が家庭での電気使用量を表すのに使っている表現であるが、現代では誤解を与える。現代では家庭での主な電力使用は冷蔵庫や空調機などの動力なのだから...

「1世帯」の表現については吟味が必要である。もしかすると「1契約」あるいは「1家庭」の意味かもしれない。2世帯とか3世帯の家庭では、実際の契約は家庭を単位としていると思われるからである注1

注1: もっとも、この混同による誤差は 10% ~ 20% 程度である。詳しくは
	http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/data23k/1-46.xls
を見よ。

補足

東京電力に関して、先の棒グラフを補完するデータが見つかったので紹介する。

家庭1軒あたりの使用量と契約電力の推移

先の棒グラフの「東京」と、ほぼ良い一致を見せている。

出典は、
東京電力:「数値で見る東京電力」の「3. 電力需要」p.14 である。
http://www.tepco.co.jp/company/corp-com/annai/shiryou/suuhyou/pdf/suh03-j.pdf

電気使用量

資源エネルギー庁の統計によれば電気利用の体系は次のように整理されています注1
特定規模需要以外の需要
	電灯需要
		定額電灯
		従量電灯(A,B)
		従量電灯(C)
		臨時電灯
		農業用電灯
		公衆街路灯
		選択約款
	電力需要
		臨時電力
		農業用電力
		建設工事用電力
		事業用電力
		業務用電力
		高圧電力
		A,B
		その他
特定規模需要
	特別高圧
	高圧

この内、家庭での利用は従量電灯(A,B)だと思われます。従量電灯(C)は多分オフィス(しかもかなり大きな)でしょう。

次のページに「特別高圧」や「高圧」のイメージが具体的に説明されている。
http://www.erex.co.jp/denryoku/index.html
スーパーぐらいになると「高圧」で契約するらしい。
ちなみに、我が大学は、「特別高圧」で契約している。(2012/11/18)

平成22年度の統計では、電灯利用全体のうち、従量電灯(A,B)の部分は 66% です。(年間平均)
1世帯当たりの電気使用量の計算では、従量電灯(A,B)を世帯数で割る必要があります注2。電灯需要の全体を世帯数で割ると1.5倍程大きくなるので注意しなくてはなりません。

ちょっと計算してみた...

沖縄電力

	従量電灯(A,B): 187,785 MWh  (月平均(注1))
沖縄県
	世帯数: 519,184 世帯(注3)

結果は

	(187785.0*1000**2)/(519.0*1000) → 361820 (Wh)
先の「1世帯当たりの電気使用量の都道府県比較」の値 (293 kWh) との違いに関して、吟味する必要があろう。

注1: http://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/resource/h22/3-1-H22.xls
注2: 従量電灯(A,B)から家庭での使用量のみを分離する必要があるが、資源エネルギー庁の統計からは分離できない。大きめの値が出るだろうと思われる。
注3: 「平成22年国勢調査」(http://www.pref.okinawa.jp/toukeika/kokutyou22/index.htm)

産業用の電気料金

産業界を代表する経団連は原発への依存を強く求めているようである。それでは産業用の電気料金は原発依存性が強いのかも知れないと思って調べてみた。(ゼミ生の協力に感謝します)

需要者としては、大きな企業を想定し、また、原発依存性は夜間電力料金に現れやすいと考えられるので、昼と夜の料金体系が異なる契約を選んで比較した。

2012年度

2012/11/05
2012/11/12

以下のデータは 2012年度の業務用特別高圧(60kV)の昼間と夜間で料金体系が異なるプランである。
このプランは季節に依存しているので、「夏期以外」の料金を取り出した。さらに、大きな需要者を想定し、多くの電力を使った場合に問題となる、1kWh当たりの電気料金のみを問題としている注1

注1: このプランは PlanB とされることが多いが、他の名称が使われることもある。

会社名		昼	夜	# メモ
北海道電力	10.91	8.29	# 特別高圧電力B
東北電力		11.24	7.88	# 60kV, 特別高圧電力B
東京電力		14.93	11.67	# 特別高圧季節別時間帯別B,60kV (09/01 改訂)
中部電力		10.02	8.30	# 第1種 PlanB,70kV
北陸電力		9.75	7.10	# 特別高圧
関西電力		9.73	7.61	# 特別高圧電力 BITOU
中国電力		9.78	8.65	# 特別高圧TOUB,60kV
四国電力		9.84	7.66	# 季節別時間帯別電力B
九州電力		9.85	6.35	# 産業用季時別電力A
沖縄電力		12.12	11.12	# 特定規模季節別時間帯別電力B"""

この表を散布図で示すと次のようになる。


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沖縄電力と東京電力を除けば、見事に横並びである。しかし、これは 2012 年度、すなわち、原発ゼロだから当然か?

東京電力は、事故の関係で特別に高い。これは例外と見るべきである。次に高いのは沖縄電力である。これは規模が小さい事や島が多い事によるのだろう。北海道電力も次に高い。何しろ北海道は広い。送電線の維持費が大きいのだろうか?


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夜間電力はどうか? 散布図から東京電力を取り除くと、僅かながら原発依存率と関係しているかのように見える。しかし、このデータは原発が動いていない 2012 年度の散布図である。
本当は依存していなくても、この程度の見かけ上の相関が発生するのだと理解すべきか?

我々が本当に興味があるのは、2010 年度のデータである。


注意: 2012/11/05 付けの記事のデータの一部に誤りがあったので訂正します。


2010 年度

2012/11/12

以下のデータは 2010年度の業務用特別高圧(60kV)の昼間と夜間で料金体系が異なるプランである。
このプランは季節に依存しているので、「夏期以外」の料金を取り出した。さらに、大きな需要者を想定し、多くの電力を使った場合に問題となる、1kWh当たりの電気料金のみを問題としている注1

注1: このプランは PlanB とされることが多いが、他の名称が使われることもある。

会社名		昼	夜	# メモ
北海道電力	10.91	8.29	# 特別高圧電力B
東北電力		11.24	7.88	# 60kV, 特別高圧電力B
東京電力		9.85	6.75	# 特別高圧季節別時間帯別B,60kV (09/01 改訂)
中部電力		10.02	8.30	# 第1種 PlanB,70kV
北陸電力		9.75	7.10	# 特別高圧
関西電力		9.73	7.61	# 特別高圧電力 BITOU
中国電力		9.78	8.65	# 特別高圧TOUB,60kV
四国電力		9.84	7.66	# 季節別時間帯別電力B
九州電力		9.85	6.35	# 産業用季時別電力A
沖縄電力		12.12	11.12	# 特定規模季節別時間帯別電力B"""

東京電力を除けば、2010年度の料金は、2012年度の料金と同じである。

この表を散布図で示すと次のようになる。


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東京電力は北陸電力と殆ど同じで、グラフでは重なって見える。東京電力の家庭用の電気料金は北陸電力に比べてかなり高かった。ところが産業用では低く押えられている。東京電力は産業界に手厚いと言われても仕方がなかろう。

沖縄電力を除けば、電気料金は原発依存率に依存せず、横並びである。それでは沖縄電力が高いのは、原発を持っていないからなのだろうか? この問題に関しては後に議論する。


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産業用夜間電力料金になると東京電力はさらに安い。10社中、2番目に安くなってしまった!

3つの疑問が残る。
(a) 沖縄電力の産業用夜間電気料金は高い。しかし、この原因は原発を持っていないからなのであろうか?
(b) 分布からは産業用夜間電力料金は原発依存率に僅かながら依存しているように見えるが、その事をどのように確認したら良いか?
(c) 依存率 40% ~ 60% のグループは、依存率 20% ~ 40% のグループより電気料金が高いのだが、偶然か? つまり、我々が期待する依存関係と逆なのだが、この事をどうみるか?

発電コストと電気料金

2012/11/05

しばしばネット上に見られる議論には

	発電コストが低い = 電気料金が安い
と言った誤解が見られる。

我々が言えるのは発電コストが低ければ、電気料金を安く設定できるはずであると言う事だけである。現実の電気料金は、競争が存在しない場合には、他の要因で決まってくる。

仮に、原子力発電の発電コストが低いとしよう。しかし、電気料金は原子力発電への依存率に関係していない。ならば、電気料金と発電コストとの差益はどこに消えたのか? それらは電力会社の利益となってしまい、消費者に還元されていないことになる。

他方、電気料金が発電コストを正しく反映しているとすれば、原子力発電の発電コストは決して低くはない事を意味している。

発電コストに関する記事

発電コストは分からない部分が多すぎるのだ。本当のところは電力会社のみぞ知る。かと言って電力会社の言う事を鵜呑みにはできない。
考えるのに役に立ちそうな記事をいくつか集めてみた。

原子力発電のコストと料金

2012/11/18
2012/11/22 追加
2012/11/28 修正(電気の販売単価に「売上高」ではなく「電力量収入」を使った)

日本原子力発電の「財務状況」の報告が、公表されている注1。その中に次の記述がある。

平成22年度の販売電力量は 184 億キロワット時程度を見込んでおり、売上高は当期に比べ 19.9%増の 1,733 億円程度、経常利益は 43 億円程度を確保できるものと考えております。

これを見ると、日本原子力発電は 9.4円/kWh で電力会社に売る予定であったことが分かる。営業利益を差し引いた金額は 9.2円/kWh となる。これは日本原子力発電から見た当時の発電コストである。

この数字は、過去の実績と比較すると、販売単価に関しては悲観的な見方(高くは売れない方向で見積もる)であることがわかる。同じ資料に載っている過去実績は、

年度 H17年度 H18年度 H19年度 H20年度 H21年度 H22年度 H23年度
売上高(億円) 1,495 1,556 1,784 1,493 1,445 1,742 1,452
電力量収入(億円) 1,491 1,551 1,777 1,474 1,440 1,735 1,443
経常利益(億円) 14 28 35 43 38 127 75
販売電力量(億kWh) 170 155 137 104 130 162 10.01

. 原発発電売上高等

である(22年度、23年度については注2、注3の資料で補足)。これから

	販売単価 = 電力量収入 / 販売電力量
	発電コスト = (売上高 - 経常利益) / 販売電力量
として計算すると注5

年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度
販売単価(円/kWh) 8.77 10.01 12.97 14.17 11.08 10.71 144.16
発電コスト(円/kWh) 8.71 9.86 12.77 13.94 10.82 9.97 136.56
設備利用率(%) 77.5 71.1 62.2 48.1 59.5 74.0 4.6
時間稼働率(%) 76.8 71.5 63.2 47.9 58.4 72.3 4.4

. 原発発電コスト

となる。

原発による電気料金が年によって大きく変動するのは、発電所の稼働率の変動が大きいからであろう。参考のために、稼働率(設備利用率と時間稼働率)も表に載せておいた注4。トラブルで稼働率が極端に下がった平成20年度に、経常利益が大幅に上がっている。さらに、稼働率4.6%までに落ち込んだ平成23年度には、なんと、なんと、2番目に大きな利益を上げているのである! この会社は特殊なビジネスモデルの上に立っていて、凡人には理解不可能か....

19年度、20年度には電力会社は高価な電気を日本原子力発電から買っていたことになるが、電気料金にどのように反映されていたのだろうか?
さらに、23年度にはとんでもない価格で電力会社は日本原子力発電から電気を買っていた。この価格ではもはや他に転嫁不可能であり、電力会社が被る他はない。購入を拒否できない理由が存在したのであろう。(電力が供給されていなくても金を支払う契約になっていたとか....)

注1: 日本原子力発電株式会社 「平成21年度決算概況について」
http://www.japc.co.jp/company/ir/pdf/220528-1.pdf
注2: 日本原子力発電株式会社 「平成23年度決算概況について」
http://www.japc.co.jp/news/press/2012/pdf/240525_1.pdf
注3: 日本原子力発電株式会社 「平成22年度決算概況について」
http://www.japc.co.jp/company/ir/pdf/230527_1.pdf
注4: 日本原子力発電株式会社 「全社計の運転開始以降の発電実績」
http://www.japc.co.jp/plant/data/results/plant_all.html
注5: 発電コストの計算は修正が必要かも知れない。

日本原子力発電(株)の原発施設稼働率

日本原子力発電株式会社(株)の運転稼働率の表があったので注1、グラフ化しておいた。何かの役に立つかも知れない。


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原発は1つの発電量が巨大な為に、トラブルによる停止が電源危機をもたらすリスクは高い。この問題を回避する為には、全国に多くの原発を持つ必要があるが、そうすれば他の問題をもたらす。
原発を安全に、安定して動かすには、国土が狭く、人口密度が高い日本は極めて不利である事を知るべしである。

注1: 日本原子力発電株式会社「全社計の運転開始以降の発電実績」
http://www.japc.co.jp/plant/data/results/plant_all.html

PPS

2012/11/21

PPS(Power Producer and Supplier) とは、電力10社以外の電気事業者である。商品である電力は他から買う。(自ら発電するケースはあるかも知れない)

エネットは PPS の一つである。次のグラフは、電力会社の電力の買値と PPS の買値を比較して、エネットに売った方が得ですよ... と言っている。

エネットが示す、売電料金の比較注1

電力会社は日本原子力発電から 9.4円/kWh で買っているとすれば、廃棄物発電余剰電力はずいぶんと買い叩かれている事になる。供給の安定性や規模が違うという言い分はあるだろうが....

エネットのビジネスは、このギャップを突いている。原発電力の売価が9.4円/kWh であれば、エネットは、この値段以上で電力を買う理由がない。

横浜市資源循環局は電力売却実績を公表している注2
それによると平成18から平成22までを見る限り、1kWh 当たりの価格は次の通りである。

年度	H18	H19	H20	H21	H22
売電単価	11.1	11.6	11.9	11.0	10.4
売電の契約先は載っていない。
実際には、ずいぶん、いい値段で売れるものだと感心してしまう...

2011年3月のYOMIURI ONLINE に次の記事がある注3

東京都八王子市が、清掃工場の「ごみ発電」の販売について、東京電力との随意契約をやめ、来年度から入札で決めることを検討していることが27日、分かった。
....
市は2000年度から戸吹清掃工場で余剰電力の売電を始めた。これまでは「東電の言い値」で売ってきたため、増収は期待できなかった。

我が名古屋市はどうか?
残念ながら古いデータ(平成10年度)注4しか見当たらないが...

工場名  山田工場 冨田工場 南陽工場
発電出力 4,950kW 6,000kW 27,000kW
年間発電量 31,690,200kWh 42,237,490kWh 171,235,000kWh
売電電力料金 139,779,837円 219,923,314円 788,084,450円
買電電力料金 40,413,019円 36,836,628円 112,692,015円
この表だけからは、電力をいくらで売っていたか、はっきりしない。
3工場を合計した売電電力料金を年間発電量で割ると、4.7円/kWh となる。しかし、年間発電量の一部を工場内で消費していたとすれば、4.7円/kWh 以上で売ったことになる。(買電電力料金は関係ないだろう)

注1: エネット「売電のメリット --- 清掃工場の余剰電力入札の落札価格(例)」
http://www.ennet.co.jp/sell/merit/index.html
注2: 横浜市資源循環局「電力売却実績」
http://www.city.yokohama.lg.jp/shigen/sub-data/data/jisseki/dat33.html
注3: YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866922/news/20120701-OYT1T00282.htm
注4: あいち産業振興機構「新エネルギー設備の概要」
http://www.aibsc.jp/report/energyhokoku-2/2bu/p142.htm

火力発電のコスト

2012/11/23

東京電力にアクセスすると次の記事が目に止まった注1

 当社は、「総合特別事業計画」に基づき、設備投資負担を抑制するため、火力電源の新規開発・リプレースにあたっては入札を行い、原則として他の事業者様から電力購入することとしておりますが、このたび、平成31年6月から平成33年6月までに供給開始するベース火力電源260万kWを一括して入札募集(以下「IPP入札募集」といいます)することとし、経済産業大臣に平成24年度供給計画の変更の届出をいたしました。
【IPP入札募集の概要】
○供給開始時期 平成31年6月から平成33年6月までの間(一括募集)
○募集規模 260万kW
○電源のタイプ ベース型電源(年間契約基準利用率70~80%)
○上限価格 9.53円/kWh

上限価格について、追加説明がある注2

ベース電源を募集することから、上限価格は自社石炭火力の建設費の実績・計画値をもとに算定した電源設備の耐用年間均等化発電原価(送電端)に、電源線に関わる系統アクセスコスト、およびCO2対策コストを加算して算出いたしました。

この記事の中には、東京電力が考える火力発電のコストが窺える。つまり、9.53円/kWh で IPP から仕入れ可能と考えているのだ。落札者の決定は来年(2013年)7月下旬である。

この価格は、表の原発発電コストと比較すべきであろう。原発発電で達成困難な上限価格を火力発電に求めているのだ。

注1: 東京電力「火力電源の入札募集の実施について」
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1222411_1834.html
注2: 東京電力「火力電源の入札募集の実施について」
http://www.tepco.co.jp/kaikaku/ipp/index-j.html

東電では、規制部門から利益の9割!

2012/11/17

総合資源エネルギー調査会総合部会 電気料金審査専門委員会(第6回)議事概要(平成24年6月20日)
に次の記述(東電側の答弁)がある。

販売電力量では、規制部門と自由化部門で6対4になっているが、利益率については、料金を作るときには収支が一致するため予想できない。第二回の委員会でも示されたが、過去10年みると、電力全体で規制部門:自由化部門が7:3,東電だけで見ると9:1になったように、利益は結果として出てくるもの。

他方、東京電力:「数値で見る東京電力」の「3. 電力需要」p.18 には、販売電力量に関するデータがある。

販売電力量および契約口数の推移(平成17~23年度)

「特定規模需要」が「自由化部門」だと考えると、「規制部門と自由化部門で6対4になっている」と言うのは嘘でしょうと言いたくなるが、東電では「規制部門」つまり、家庭から9割の利益を上げているのだ!
こういう説明に納得している「専門委員」も情けない...

なお、電力自由化の流れについては次の資料が詳しい。

役員報酬

2012/12/10
2012/12/11 追加

蛇足ですが、電力各社の役員報酬を調べました。会社の懐の暖かさを反映しているかな...と思って。
Edinet で、電力各社の2011年度の有価証券報告書の「役員報酬等の内容」に載っていたものです。
ゼミで特別に有価証券報告書の読み方を紹介してくださった盛田先生および、報告書から電力10社の役員報酬を調べたゼミ生一同に感謝します。

会社名 取締役報酬総額 取締役人数 役員報酬の平均
北海道電力 425.0 15.0 28.3
東北電力 599.0 21.0 28.5
東京電力 170.0 19.0 8.9
中部電力 637.0 17.0 37.5
北陸電力 397.0 12.0 33.1
関西電力 745.0 20.0 37.2
四国電力 626.0 19.0 32.9
中国電力 566.0 18.0 31.4
九州電力 566.0 17.0 33.3
沖縄電力 304.0 15.0 20.3
金額の単位は100万円です。倒産状態の東京電力は、さすがに報酬を減らされました。事故前のものが欲しいのですが...

ありましたね...

2008     2009     2010    
内容 報酬総額 人数 単価 報酬総額 人数 単価 報酬総額 人数 単価
北海道電力 437 17 25.71 509 14 36.4 528 14 37.7
東北電力 589 18 32.7 628 26 24.2 678 18 37.7
東京電力 714 23 31 698 19 36.7 700 22 31.8
中部電力 618 15 41.2 690 17 40.6 685 16 42.8
北陸電力 360 11 32.7 469 15 31.3 472 13 36.3
関西電力 716 17 42.1 830 22 37.7 877 19 46.2
四国電力 590 14 42.1 701 21 33.4 628 15 41.9
中国電力 656 14 46.9 616 15 41.1 524 16 32.8
九州電力 670 15 44.7 743 21 35.4 795 17 46.8
沖縄電力 278 11 25.3 293 15 19.5 313 11 28.5
「単価」と言うのは「役員報酬の平均」の意味です。

ゼミ生がグラフに書いてくれました。「役員報酬の平均」の部分です。

電力10社の役員報酬の平均比較

僕は認識を新たにしましたね。東電が一番報酬が大きいと思っていたら、間違っていました。中電の方が大きい。もっとも、母数が小さいことにも拠る。

原発依存度との関係は薄いようですね。