2009/12/28
2012/07/07 追加
この記事は今のところ単なる僕のメモである。
排出系 | ゴミ総量 | 生ゴミ量 |
---|---|---|
家庭系 | 450Kt | 160Kt |
事業系 | 233Kt | 119Kt |
「ごみレポート」には家庭系のゴミの内訳が載っている(「家庭から出るごみと資源」)。
ここに載っているグラフは誤解を招く書き方であるが、数字のつじつまが合うためには
45万トンのうち、資源ゴミとして利用されているのは21万トン、残りは資源化されないゴミ(焼却処理、あるいは埋め立て処理されているゴミ)
と言う意味であろう。実際
(16 + 6 + 2 + 1 + 0.1 + 0.2) + (0.1 + 13 + 3 + 1 + 1 + 2) = 45.4
名古屋市はゴミ収集時に「生ゴミ」を「可燃ゴミ」と分別していない。従ってこの棒グラフの「生ゴミ」は「可燃ゴミ」の意味であろう。
ゴミ処理コストを他の都市と比較しようとする時に会計計算の方法が統一されていないので困る。この問題に関して環境庁は「廃棄物会計基準」を作り始めた。
「それからガス化溶融炉の建設費の問題でございます。これは、見解書の中に環境省が調査しました平成 11 年度、12 年度の実例を表としてあげさせて頂いておりますが、これによりますと焼却能力のごみ1トン当たりの建設費というのが、従来型もガス化溶融炉もほぼ平均しますと 5 千数百万円というような結果か出ておりまして、ガス化溶融炉の建設費か特に高いといったようなことはないというふうに私どもは考えております。ちなみに比較されております南陽、猪子石につきましては、これは灰溶融炉か付いておりませんので、同等の比較というのは不適切てはないかというふうに考えております。」
実際の耐用年数に関しては 15 ~ 20 年か?
注意: この処理費用には建築負担金は含まれていない。
「ごみレポート」によれば、1トン当りの生ゴミの処理コスト113000円の内訳は収集に 76000円、埋め立てに 36000円である。
この内訳を見ると焼却処理がされていないように見えるが、実際には焼却処理コストが 0円として見積もられている可能性の方が高い。実際、現在の名古屋市のゴミ分別では生ゴミは可燃ゴミ扱いである。
生ゴミは大量の水分を含むので焼却炉には工夫が必要である。
「名古屋市の焼却工場(南陽、猪子石、五条川)に設置されている焼却炉はストーカ炉です。ストーカ炉とは、ストーカ(火格子)の動きによって、ごみを攪拌、搬送しながらごみを燃やす焼却炉で、都市ガス等の燃料を使用せずに、ごみを燃やしています。」(名古屋市)
(http://www.city.nagoya.jp/kurashi/gomishigen/gomi_nagare/)
焼却炉からの廃熱は原理的には発電や温水などの熱源として利用できる。
愛知県で運転中の焼却炉が実際にどのように、どの程度の廃熱利用を行っているかは次の資料に詳しい。
以下にこの資料に載っている名古屋市のゴミ焼却炉を載せる。
施設名称 | 完成 | 施設の種類 | 炉形式 | 処理能力 (t/日) | 発電能力 (KW) | 建設費 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
名古屋市猪子石工場 | 2002 | 焼却 | 全連続 | 600.0 | 12,500 | 313億円 | |
名古屋市南陽工場 | 1997 | 焼却 | 全連続 | 1,500.0 | 27,000 | 790億円 | |
名古屋市富田工場 | 1989 | 焼却 | 全連続 | 450.0 | 6,000 | 141億円 | 休止中 |
名古屋市五条川工場 | 2004 | 焼却 | 全連続 | 560.0 | 14,500 | 385億円 | 灰溶融 |
名古屋市 ((株)鳴海クリーンシステム) | 2009 | ガス化溶融 | 全連続 | 530.0 | 9,000 | * | 建設中 |
この表で鳴海工場に関しては PFI 契約で、建設費 191億円(契約時)、20年間の管理運営費 244億円となっている(出典)。電気の売上は名古屋市の取り分になるべきなのだが...
ゴミ発電の現在の到達点と PFI 契約に関しては次の資料が詳しい。
ゴミ火力発電が生み出す電気は、簡単のため、発電能力:10000KW、耐用年数:20年間、1KWH:12円とすると
10000*24*365*20*12 = 21024000000 (210億円)である。従って、もう少し頑張れば建設コストをカバーできるかも知れない。
1KWH=12円は中部電力の話で、東京では 1KWH=24円である。すると建設費は既にカバーされている。自治体から可燃ゴミを無料で受け入れての発電ビジネスの可能性を考えても良いだろう。
温水の利用に関しては住民にお風呂のサービスが行われたりもしている。
水分の多い生ゴミはエネルギー効率を著しく下げるはずである。
可燃ゴミから発生する燃焼熱の多くは生ゴミを乾燥するのに使われるているのではないかと思い見積もってみた。
水の気化熱: 539cal/g
20℃の水を1g蒸発させるには 610cal が必要
100g なら 61000cal = 61Kcal
この他に100℃ の蒸気が排気されるまでに排気温度1までに加熱されるので、さらに熱が必要。(水蒸気の比熱は水の比熱の半分程度である)
他方ご飯(水分含む)のカロリー2は 100g 当り 168Kcal
つまり 90% が水分として見積もっても残飯はエネルギー源として使える。
残飯のカロリーの半分程が水分の処理に使われていると考えてよい。
ご飯はカロリーの大きな食物で、通常の生ゴミはもっとカロリーが小さい。
ご飯の半分に満たないカロリーの生ゴミであれば、(充分に乾燥させない限り)焼却処理のお荷物と考えた方がよい。(殆どの果物)
名古屋市「ごみレポート」より
「生ごみは迅速で確実な衛生処理のために焼却されてきましたが、生ごみの水分が焼却・発電効率を低下させるという弱点がありました。そこで、生ごみの有効利用とCO2削減のため、当面、次の視点から生ごみの減量、 資源化を進めます。
1. まず、発生抑制と水切りを推進します。
2. 次に、地域や家庭での自主的堆肥化への支援とともに、事業系での自主的資源化の誘導(飼料化・堆肥化・エタノール化など)を図ります。
まあ、妥当な方向ではあるが、収集の方法を工夫しない限りコストを減らせない。
現在可燃ゴミは週2回収集されている。2回必要なのは生ゴミが腐るからである。生ゴミが完全に発生源で処理できれば収集回数を週1回に減らしても構わないはずであり、それによって名古屋市の市民税を年間1万円(1戸当り)程減らす事が可能なはずである。
収集回数に関する変更は瀬戸市のような農村地帯を抱える自治体の方がやりやすいだろう。農村地帯では可燃ゴミの収集に大きなコストが掛かっているはずであるが、他方では大抵の家庭には庭があるので生ゴミを収集してもらうニーズが少ないはずである。(庭が無い家庭には生ゴミ処理機を買ってもらう。) 可燃ゴミの収集回数が週1回の地域を設定して、その地域では市民税を1万円ほど減額したら良いのではないだろうか?
「生ゴミ」は科学にはなじみ難い。「ゴミ」は科学用語ではなく「社会」用語である。従って問題にしている「生ゴミ」を科学的に定義できない。我々が「生ゴミ」に関して言える事は、それが食物の残りかすである事だけであり、何か実験をしてデータを出しても、データを生み出した対象を正確に記述できないと言う、科学論文としては致命的な問題に遭遇する。
食物(有機物)の主たる構成元素は炭素(C)、水素(H)、酸素(O)である。炭素x個、水素y個、酸素z個から構成される分子は、化学式では CxHyOz と書く。
自然界で見られる生ゴミの代表的な化学反応は燃焼とメタン醗酵である。以下の反応式で、n,m,k は原子数の保存則から決定される。
CxHyOz + nO2 → mCO2 + kH2O
この反応は酸素が充分に存在する環境で起こる。
燃焼とは通常は火炎を伴う化学反応を指すが、広義にはここに挙げた反応に帰着する全ての反応プロセスを指す。発火点以下の酸化プロセスはもちろん好気性微生物による生ゴミの分解も燃焼プロセスとして理解できる。
狭義の燃焼
広義の燃焼
発火点以下で発生する燃焼
低温燃焼
RDF
RPF
CxHyOz → nCH4 + mCO2 + kH2O
この反応は酸素が無い環境で起こる。嫌気性微生物が反応を担っている。
現在(2009年)市販されている家庭用生ゴミ処理機はどれも温風乾燥型である。かっては微生物分解型もあったが、人気が無い様で、生産停止状態である。
温風乾燥型は電力によって熱風を送り、生ゴミを乾燥させる。堆肥化までは行わない。しばしば「エコ」と言う宣伝文句が見られるが、本当に「エコ」かどうかは微妙である。なぜなら、電力は高品位の高価なエネルギーであり、それを熱源として使うのは非常に勿体ないのである。焼却炉の廃熱を使って乾燥させる方がトータルなエネルギーが小さい。他方では乾燥させる事によって重さも体積も小さくなるので生ゴミの収集コストが(そして収集車のガソリン代も)小さくなるであろう。微妙だというのは、この辺の収支決算である。もちろん市にとっては生ゴミが乾燥状態で出された方が何かとありがたいはずである。年間の補助件数を何故制限するのか理解し難い。
温風乾燥型の生ゴミ処理機の人気が高いのは、早く乾燥できて、乾燥すれば生ゴミが腐らず、体積が小さくなるからであって、その便利さが受けているのだと思われる。
微生物分解型は何故人気が無いのだろうか? 考えられる原因は
なおいずれの方式も肥料は生成しない。肥料になるには熟成が必要であり、短時間では無理である。家庭用生ゴミ処理機を設置する目的は「乾燥させて可燃ゴミとして出す」と割り切った方がよいであろう。肥料を必要とする家庭には庭があるのだから...
庭があればもっと簡単な方法で処理できる。最も原始的な方法で、単に「庭に埋める」である。穴を掘って生ゴミを埋め、土を被せる。後は土壌に含まれる微生物や虫が適当に生ゴミを分解してくれる。僕の経験では、丁寧にコンパクトに順に埋めていけば、畳1枚程の面積があれば何とかやっていける1。庭があればこれに勝る方法は無いと今のところ僕は考えている。
かってはコンポストとボカシの組み合わせをトライした事もあったが直ぐにギブアップした。ボカシは生ゴミを嫌気性微生物で醗酵させる。醗酵した生ゴミは臭くて後処理に困るのである。この方法は肥料を採る事を目的としているらしいが、それならばコンポストを使わないで初めから直接土に埋めた方が楽であろう。ボカシも要らない。僕はナマクラだ。
補足: 我が家では、2009年の夏以来、生ゴミを出していない。生ゴミを自家処理して以来、3年になる。この実践による結論は、「庭に直接埋めるのがベスト」である。埋め方に、ちょっと工夫をした方が良い。
生ゴミが微生物によって分解されると、土が酸性になる。土が酸性になると、微生物の働きが弱くなる。つまり、分解速度が遅くなり、場合によっては、悪臭を出したりする。従って、生ゴミを埋め立てる時に、酸を中和する作用を持つ肥料を加えた方が良い。「有機石灰」とか「苦土石灰」とかが該当する。いずれも酸性土を中和するために使われる、ありふれた安価な肥料であり、園芸店で売られている。分量は? 僕は一握り程加えているが、適量かどうかは、僕には分からない。効果は、かなりあるようだ。お試しあれ。(2012/07/07)
ネットの記事を見るに「平石式」と言うのがある(http://eco.tut.ac.jp/~bac/homepage.html)。培養土の中で好気性微生物を使って分解させると言うものだ。分解を促進させるためには適度な温度と撹拌が必要である。平石式では温度を上げるためには電力を使わずに日光を使う。従って日当りの良いスペースが必要になる。撹拌は手で行う。
平石式はネットの記事を見る限り好評である。しかし微生物によって生ゴミを分解するのは、(よほど細かく裁断しない限り)1日や2日では難しいはずである。平石式の有効性については僕も検証してみたいと思う。
生ゴミの分解熱で生ゴミの分解が順調に進むのが理想なのだろうが、そのためにプラントが要求され、家庭レベルでは無理なのではないかと思える。これは僕の直感であるが間違っているかも知れない。
生ゴミ処理機の満足度について、補助を行っている自治体レベルの、ユーザからのフィードバックが見当たらない。
機種、利用環境、排出量などを合わせたちゃんとした調査が欲しい。
マンションではディスポーザーが人気があるようだ。但し新築の場合のみの選択肢。
集合住宅におけるディスポーザ系統排水管の配管清掃費用は、他の系統に比べて手間が掛かるため割高で、1住戸あたり 10,000 円 / 年程度といわれている(文献[7])。
ディスポーザーの問題
僕は今年の夏から生ゴミを可燃ゴミとして排出していない。夏の間の生ゴミは全て庭に埋めた。埋めた後には次の写真に示すようにびっしりと草が生えている。埋めた範囲は黄色の線で示してある。草と言っても僕が一番気に入っている花である。例年はこれ程までに密集しない。草の名前は知らない。開花期は11月から4月の冬咲き。びっしりと小さな薄紫の花を付ける。香り良く、草丈10cm
生ゴミは単にコンパクトに埋めていく。埋め終わった場所が分かるように小さな立て札が立ててある。畳1枚程のスペースがあればひと月ぐらいで一巡する。夏場であれば、その頃には前に埋めた部分は(素人目には)ほぼ分解されている1。
生ゴミを土に埋め込む場合には、既に植えられている他の植物から離す必要がある。文献[1]によると堆肥化に至る前に有害な物質が生成されるからだと言う。堆肥として使えるためには30日以上の時間が必要らしい2。
畳2枚程のスペースがあれば花を植える場所と生ゴミを埋める場所を交互に入れ替える事ができるかも知れないが、それで本当に良いのか否かは数年間経たないと結論が出にくいだろう。
僕のこれまでの経験では、生ゴミを埋め込むスペースがあれば、この方法が一番楽である。冬は面倒かと言えば、そうでもない。埋めなくても腐らないし虫も来ない。ある程度バケツ等に溜めて纏めて埋め込めば構わないと思う。
さて庭が狭くて生ゴミを埋める場所が小さい場合にはどうしたら良いか? ネットには植木鉢を使った平石方式と言うのが紹介されているが、僕も植木鉢を使うが別の方法を試みた。平松方式と異なり大きな植木鉢を使う。理由は生ゴミを投入しやすいのと、発酵熱による分解が期待できるからである。しかし庭が無いと無理である。
日当りの良い場所ではないが西日は射す。
準備したのは
植木鉢の底に赤玉土を敷いてその上に培養土を入れたが1、赤玉土が本当に必要だったのかどうかは分からない。
12月に入ってとうとう僕は生ゴミの投入を停止して、一週間程休めた。生ゴミの分解が遅く、新しい生ゴミを投入する気が失せたのである。その間、生ゴミは庭の土に直接埋め込んだ。
生野菜のクズはなかなか分解されない。当然である。生野菜のクズは生きているので、土の中の微生物に対して抵抗力を持っている。この点、魚等のアラや調理済みの食べ残しと本質的に違う。
土壌微生物を利用する生ゴミ分解は生野菜は苦手なのだ。この問題は生野菜を食べてくれる小動物を入れれば解決されるはずだが、後回しにする。
もっとも生野菜クズは庭に適当に捨てていても構わないはずである。神経質な人でなければ... 我が家は落ち葉も庭で朽ちるのに任せている。
今朝、蓋を開けると湯気が出ていた。手をかざすと温かい。へぇー、こんなに醗酵しているんだ...
温度計で調べてみると外気温との差は9℃もあった。
僕は醗酵熱の利用については諦めていたので、いい加減な断熱しかしていないが、利用できるのならもっとしっかりとした断熱をする価値があるかも知れない。
でも何故今頃になって発酵熱に気付いたのかと言うと、数日前から僕はナマクラになって、生ゴミを土の中でかき混ぜなかった。つまり生ゴミが土の中で塊になったままだ。でもよく考えてみると、この方が発酵熱を貯めやすく、生ゴミの温度が上昇し、そのために醗酵が進み易いはずだ。
あれから生ゴミ植木鉢の温度を測っているが、温度が殆ど上昇していない。問題を理論的に考えてみる事にした。考察の結果はこのページの「生ゴミ醗酵の熱均衡」に解説してある。
何故高温部で分解しないのか? 理由は単純だと思う。我が家の場合には残飯が殆ど出ない。生ゴミの殆どは調理の過程で発生する野菜クズと魚のアラばかりである。しかもそれ程多くは出ない。従って明らかにカロリーが不足している。さらに植木鉢の中には湿った土が大量に含まれているので状況をもっと悪くしている。仮に生ゴミが完全に燃焼したとしても、植木鉢の中の土を充分に暖める訳がないのだ。
冬は寒くて生ゴミが分解されないなら、考え方を変えてみたらどうか? 植木鉢に単純に溜めていっても、生ゴミが腐らないのなら気にする事も無いではないか? 虫も湧かないし...
容器の中を一旦空にして、単に生ゴミを詰め込む事にした。もっとも生ゴミを追加した時に培養土を一握り程バラバラと掛けてはいる。春になれば醗酵の条件が整う事を期待して...
断熱性能を改善するために、植木鉢を2個重ねた。間にはウレタンフォームが入っている。(1mm厚の3枚重ね)
ところで植木鉢の2個重ねは次のHPからヒントを得たものだ。
もう一つ驚くのは次の HP である。
発酵促進材を加えて発酵開始。開始時の堆肥温度29℃。当日夜の堆肥温度は52℃に上昇しました。既に発酵した植物系堆肥は、嫌気性菌による約75℃の高温域を経過しているためか、悪臭を放つことはありませんでした。
平石式では植木鉢の置き場所としてマンション等の南向きのベランダが想定されている。植木鉢もあまり大きなものを使わない。ここでは推奨されている 12号を使ってみた。太陽の熱を利用するので黒が良い。(2009/11/15)
ネットの記事を見ると「一次醗酵」、「二次醗酵」の言葉の使い方が人によって異なっている。そこでプロがどのような意味で使っているかを調べてみた。
EM ボカシを使用している人は一次醗酵を嫌気性微生物による醗酵だと考えている。このベトベトとした生成物は強烈な悪臭を放つ。他方一次醗酵による生成物を収集して二次醗酵を自治体の責任で行おうとする試みがあるが、もちろん嫌気性微生物による生成物を収集する意図はないはずである。
堆肥化容器の中の生ゴミ醗酵を簡単なモデルで表す(図1)。
橙色で示したのは堆肥化容器の内部でここに生ゴミが醗酵している。簡単のため温度は均一とする。
褐色は容器の内部と外部環境の境界(断熱材)を表す。
T0: 外部環境の温度(外気温)
T: 生ゴミの温度
温度差があるので生ゴミから環境に流れ出る単位時間当りの熱量は T - T0 に比例する。生ゴミの発酵熱がこれより小さいと生ゴミは冷えていく。大きい場合には生ゴミの温度は上昇していく。温度 T における生ゴミの単位時間当りの発酵熱を g(T ) とする。
関数 g(T ) はどの温度でも正である。T が小さいと醗酵が止まるので g(T ) はゼロに近づく。醗酵を担う微生物を一種類だけとすれば高温側の振る舞いも単純なはずである。醗酵に最適な温度があり、それよりも温度が高いと微生物は活性を失い、やがて死ぬ。従って高温側でも g(T ) はゼロに近づくと考えて良いだろう。この様子を図2に示す。座標軸の原点は温度に関しては T0 になっている。
直線で示されているのは外部に流れ出る単位時間当りの熱量で、これは T - T0 に比例する。比例係数は壁の断熱性能に依存する。性能に応じた3つのケースが a,b,c で示されている。a は断熱性能が低く、均衡点が1個しかない。この均衡点は醗酵の最適温度よりも低い。他方 c は断熱性能が高いケースで、均衡点は最適温度よりも大きい。b のケースがもっとも興味深い。この場合には3つの交点を持つ(以下これを TL, TM, TH とする) が、中央の交点(青色の◯で示されている) TM は不安定点である。つまり T がこれより小さいと温度が下がって行き結局 TL まで下降する。逆に大きいと温度が TH まで上昇する。
次に生ゴミの発熱性能を高くした場合を考えてみよう。例えば生ゴミの量を増やすとか、分解しやすい高カロリーの生ゴミを投入するとかすれば発熱性能が高くなるだろう。
充分に発熱性能を高めると赤色で示した発熱曲線(1)になるだろう。この場合には高温側に均衡点ができる。生ゴミは分解され徐々に発熱性能を落とす。やがて橙色で示すような3箇所で交点を持つ発熱曲線(2)になるが、高温側の交点が安定点なため高温を保ちながら分解を続ける。そしてついには黄色で示す発熱曲線(3)になり、均衡点は低温側に移る。
従って高温側で醗酵させるには容器の断熱性能が肝要である事がわかる。その下で生ゴミを充分に入れる。それでも自然に高温側の醗酵に至らないなら、加熱材として分解しやすい高カロリーの何かを添加しなくてはならなくなる。
僕がここで解説した話はちょっと考えれば分かる話なので、どこかの教科書の中に書かれているかも知れない。
家庭レベルで容易に安価に手に入る断熱容器は発泡スチロール容器である。そこで発砲スチロール容器の断熱性能を具体的に見積もってみる。
発泡スチロールの熱伝導率は 0.034 から 0.043 である1。この意味は温度差が 1℃ の時に、面積 1m × 1m 、厚さ 1m の断熱材を 1 時間の間に流れる熱量をワットで表したものである。以下では熱伝導率を 0.034 として見積もる。さらに 1WH = 0.86Kcal とする。
そこでまず最初に簡単のために発泡スチロールでできている一辺10cmの正六面体を考える。厚さは1cmとする。この場合には 1℃ の温度差があるとき壁面を通して外部に流出する熱は1時間当り
0.034*6*0.01*100*0.86 -> 0.175 Kcalである。
生ゴミを毎日投入し、投入した生ゴミは何日かをかけて分解し、ゆっくりと熱を出すとする。その熱によって容器と外界との温度差はほぼ一定に保たれると考えられる。以下では温度差が 10℃ になる場合に外部に流出する一日の熱量を 2cm 厚の正六面体の発泡スチロール製の容器について考察する2。
一辺 30cm の 2cm 厚の正六面体の場合には1日当り
0.175*3*3/2*10*24 -> 189 Kcalの熱が流出する。
一辺のサイズ(cm) | 流出熱量(Kcal) | 残飯換算(g) |
---|---|---|
20 | 84 | 50 |
30 | 189 | 112 |
40 | 336 | 200 |
50 | 525 | 313 |
60 | 756 | 450 |
誤解がないように断っておくが、ここでの考察はあくまで定常に温度差を維持する場合で、切り返し等によって短時間の間だけ高い温度が実現する可能性を否定していない。
容積はサイズの 3 乗に比例して増える。他方表面積はサイズの 2 乗に比例する。従って容積分の生ゴミを投入するならサイズが大きい方が有利である。しかし家庭では多くの生ゴミは出ない。従って家庭レベルで考えられるのは次のような方法である: 大きめのサイズの容器に毎日生ゴミを投入する。初めは殆ど温度が上がらないだろうが、ある程度溜まると温度が上がり出す。この状態は長続きするはずがなく、燃料(生ゴミの可燃成分)が無くなるとやがて沈静化する。そしてまた生ゴミを投入し続ける... これで大丈夫か否かに関しては実験を待たなくてはならない。
多糖類の場合に燃焼に必要な酸素の量を見積もってみよう。多糖類はほぼ C6H10O5 のチェーンとみてよいので反応式を簡単に
C6H10O5 + 6O2 → 6CO2 + 5H2O
と看做すことにする。従って 162g (= 6×12 + 10×1 + 5×16) の燃焼に 6 モルの酸素を消費し、6 モルの炭酸ガスが生成する。
1 モルの気体は 22.4L(リットル) と考えて、134.4L の酸素が要求される。空気の量で言えば 672L である。
残飯の水分が 90% とすると、残飯 162g の燃焼に必要な空気は 67.2L、100g なら 41L である。つまり一辺 30cm 位の小さな容器で密閉するわけには行かない事になる。
専門書に微生物活性の温度依存性に関する概念図があったので載せておく(文献[6])。専門家が抱くイメージなんだね...
微生物の実際の活性温度に関しては次の記述が参考になる。
細菌の増殖に最も適した温度(最適増殖温度)は菌種によって異なり、一般に低温菌(最適増殖温度;12〜18℃、0℃で増殖可能)、中温菌(最適増殖温度;30〜38℃)、高温菌(最適増殖温度;55〜65℃、一部の菌は95℃でも生育可能)の3群に大別される。
JAFC(食品産業センター)データベース http://www.shokusan.or.jp/haccp/basis/1_4_24_temperature.html
土壌の中には多様な細菌が混在し、各々の適応温度の中で増殖していく。微生物の種類毎の生育環境と増殖能力が分かると良いのだが...
微生物データベース(http://riodb.ibase.aist.go.jp/mrcd/servlet/MainServlet)があるが僕には使いこなせない。
生ゴミ分解に関係する典型的な微生物の特性が解説されているものは無いか?
EM ボカシとは EM 研究所が販売する商品で、米ぬか等を「EM 菌」で醗酵させて作られたものである。生ゴミの堆肥化に有効であると言う。
EM 研究所によると「EM 菌」と言うのは商品名であって、自然界に存在する菌をブレンドしたと言う。
僕は EM ボカシの有効性を示す科学的批判に耐える実験レポートがどこにあるかを知らない。
EM ボカシによる生ゴミの処理は嫌気性条件下で行われるのであるが、生ゴミの分解は好気性微生物を使う方が遥かに効率が良いはずである。EM ボカシによる生成物は悪臭がひどい。実際問題としてこの生成物を処理するには土に埋め込むしかない。ならば初めから土に埋め込めばと思う。
自然界の土の中には様々な微生物が含まれている。生ゴミを与えれば、与えた生ゴミに応じた微生物が2~3日で充分に繁殖する事が実験的に示されている1。つまり常識的に考えると生ゴミを分解するのに特別な菌を添加する必要は無い。EM ボカシの効果が科学的に確認されないまま、普及のための宣伝だけが先行しているのが現状である。
EM 研究所は「世界救世教いづのめ教団」(http://www.izunome.jp/izunome/)傘下の研究所である。この教団は他に「自然農法国際研究センター」を持っている。
教団のHPには
私たちは今、浄霊を取り次ぎ、自然農法を普及し、華道を広め、MOA美術館を中心にした芸術活動に励んでいますが、こうした活動はいずれも岡田師の救世思想に基づく実践的な取り組みに他なりません。
批判的な記事は「効果」を報告する膨大な記事の中に霞んでしまっている。